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  • 中古建物の価格

    カテゴリー:市場分析 2023年1月26日 記事番号:962

    不動産の無料相談の際に、しばしば受けるのが「戸建住宅を売る時に建物の価格がずいぶん安く査定されてしまうのですが何とかならないでしょうか」という切実なご相談です。

    不動産屋さんに売却価格の相談をすると、大抵かなり安い金額で提示されてしまいがちです。特に建売住宅を購入した方が哀しい査定を言われてしまうようです。すなわち、買った時は建物価格に1800万円も出したのに、10年経ったら500万円、15年経ったら殆どゼロでしか査定して貰えないというような内容です。

    不動産屋さんは意地悪で言ってるのでもないし、「安く買い叩いてやろう」などという下心でそんな価格を提示しているのではありません。実際、市場で売却しようとしたら「そんな価格」でしか売れない現実を知っているから、そのままお客様に説明しているだけなのです。

    不動産鑑定士として相談を受けていると、土地価格だけでなく建物価格についても鑑定評価を行う事があります。

    まず小職が評価した戸建住宅の建物価格の経時変化の実際のデータを下記に示します。

    鎌倉の事例は七里ガ浜を中心とした住宅地における戸建売却事例に基づくものであり、逗子・葉山の事例は逗子駅から高台に上った住宅地域における戸建売却事例に基づくものです。いずれも人気の地域ですので、中古住宅として多くの販売事例があります。

    なお、売却事例を収集する際に留意した点があります。
    それは「全て注文住宅で建てられた住宅である」という点です。
    皆さんもご存知の通り、注文住宅は建売住宅に比べて造りがしっかりしており、それなりの建築費用が掛かります。単純に言って建売住宅なら坪40-50万円で建てられているところを、注文住宅の場合は坪60万円以上の費用が掛かっているという違いがあります。




    図でお分かり頂ける通り、注文住宅でさえも10年で半値以下になり、15年から20年で価値ゼロになってしまっている実態があるわけです。

    ただし例外があります。
    それは主に水回り設備を最新の設備に入れ替えてしまうと、市場価値がぐっとあげてしまうことが出来るというものです。マンション等では良く見られる「リノベーション」と呼ばれる更新工事ですが、これを戸建住宅にも施すことで売却価格を上げることが出来るわけです。

    不動産業者の方々はこの市場実態を良く御存じですので、戸建住宅の「買取再販」案件として、こうしたリノベーション工事を施して、利益を出せる価格で売却する業者さんも多くいらっしゃいます。すなわち、上記の掲示低下曲線から上位に持ち上げられた価格帯から工事費用を控除したものが買取再販の利益として得ることが出来るわけですから。

    もちろんリノベーションによる価値回復度合いが低ければ(すなわち工事費用を抑制すれば)、それほど売却価格は上げられませんし、築20年を超えると、水回りを変えたからと言って高い価格を出してくれるお客様もいらっしゃらない現状がありますので、築年は重要です。

    なお、建物は防水性能を維持していることが必要なので、概ね15年毎以内に外壁塗装や屋根の修繕等(長期修繕工事)を行う必要があります。それをしなければ「朽廃」状態になってしまうので、長く住むためには最低限、長期修繕工事を定期的に行ってゆく必要があります。

    せっかくですから不動産鑑定士が建物価格を鑑定評価するケースを御紹介させて頂きます。主には以下の3点です。

    ①離婚による財産分与時の時価評価
    ②相続における建物価格の時価評価
    ③建物譲渡における消費税等の税金低減のための時価評価

    一般的に建物価格と言えば、固定資産税の課税評価基準額として、毎年4月に納税通知書で送付されてくる価格が、一般の方々には馴染みがあると思います。新築時の建物価格は概ね市場価格の半額水準ですが、毎年減価償却して行き、耐用年数(木造戸建住宅なら20年)まで定額償却していき、耐用年数を超えると新築価格の20%で据え置きになります。
    これは徴税のための便宜上の計算式です。

    市場において対象不動産建物が幾らで評価されているのかは、不動産鑑定評価によってしか明示できない(少なくとも国税や裁判所には)ので、建物の時価を把握しようとすれば不動産鑑定士に依頼する必要があります。

    ここで気を付けなければならないのが評価法です。
    単純な「耐用年数法」と呼ばれる、税務上の評価法と同じ手法はダメです。判例として例えば下記のように否認されています。
    ----------------------------------------------------------
     評価通達に定める評価方法は、一般的に合理性を有するものと解されるところ、当該定めを適用して評価することが著しく不適当と認められる特別な事情が存する場合、すなわち、評価通達により算定される建物の評価額が客観的交換価値を上回る場合には、他の合理的な評価方法により時価を求めるべきものと解されている。この場合の評価通達により算定される建物の評価額が客観的交換価値を上回っているといえるためには、これを下回る不動産鑑定評価が存在し、その鑑定評価が一応公正妥当な鑑定理論に従っているというのみでは足りず、同一の建物について他の不動産鑑定評価があればそれとの比較において、また、近隣における取引事例等の諸事情に照らして、評価通達により算定された建物の評価額が客観的交換価値を上回ることが明らかであると認められることを要するものと解されている。
    (平20. 5.21 沖裁(諸)平19-5)
    ----------------------------------------------------------
    このために小職は上図に示すように、実際に取引されている戸建売買価格から配分法と言う手法を適用して、「建物の価格」を抽出して求めているのです。配分法を適用している限り、国税から否認されることはありませんので。

  • お墓の隣の家の時価は路線価評価で良いと思いますか?

    カテゴリー:相続関連 2022年3月16日 記事番号:960

    誰でも「隣にお墓があったら同じ値段じゃ買わないよね」と思うかといえば、実は「隣がお墓なら高い建物はまず建たないし、日辺りも眺望も通風も良いじゃない」と思う人も中にはいらっしゃいます。
    なので必ずしも「隣がお墓=著しい減価」という単純なものでもありません。

    実際、「隣がお墓だから10%減額して相続税申請したって良いじゃない」と思って申告された方が、国税に否認され、国税不服審判所で争った結果、敗けました。

    なぜ負けたか、
    それは減価理由を適切に示すことが出来ていなかったからです。
    ではどうすれば勝てたのか。
    それは「実際に周辺の取引事例で『隣にお墓がある不動産』は、周辺の『隣にお墓のない不動産』より明らかに低額でしか売れていない、という市場の実態を調査して示すこと」が必要なんです。
    どうすればそのような調査が出来るかといえば、
    「信頼できる不動産鑑定士に依頼する」ことですね。
    以前、玄関を出ると目の前にお墓が広がるお家の相続に際して、小職に鑑定評価が依頼されました。お墓から見るとそのお家は「お墓と渾然一体となっている」状況が見て取れる、そんなお家でした。
    そこでそのお家の半径10km以内のお墓をピックアップして、お墓隣接戸建地の取引事例と、隣接はしてないが近傍の戸建地の取引事例を一杯集めまして、それを元に評価書を作ったんですよ。
    端的に言って「お墓と渾然一体となっている土地」は20%から30%の減価がありました。写真はその一例ですね。まだ塀があるだけましなので、ここは20%減でした。
    要はホントに現場の状態に因るんです。

    そこまで調べて申告書に添付したので、大幅減価した申告額でしたが、何の問題もなく通りました。
    税務署の職員も国税不服審判所の判例は見ています。なので、判例に書かれたポイントを押さえた主張をすれば、税務職員も安心して通してくれると言うものなのです。

    小職にこの物件を紹介してくれたのは某税理士先生ですが、その先生はいつも「これは減価要因じゃないか」と思ったら、必ず小職に判断を求めます。半分は「先生、これや無理筋ですよ」と言うものですが、半分は「行けますね、これなら3割減になりますよ」と言って鑑定評価を行い、ご依頼者様に喜んで頂いています。

    税理士の先生が「これは減価要因じゃない」って疑問を持ってくださることが大事なんです。そうしたら専門家として適切な助言が出来ますので、御依頼者様に損をさせない仕事が出来ると思うんですよ。
  • タウンニュースの元旦号に掲載頂きました

    カテゴリー:業務紹介 2022年1月2日 記事番号:958

    タウンニュースの元旦号に掲載頂きました。
    昨年、何人かの借地人の方が「電話帳で調べて連絡させて頂きました。借地について困っていることがあるのですが、相談に乗って頂けませんでしょうか」と電話で照会を受けました。
    話を伺うと、「なるほど、これは答えてくれる人は居ないだろうな」と唸るような問題ばかりでした。実はこうした方々は既に他の専門職業家の方に相談に行ってるのです。
    しかし「借地」に関して十分な知識を持っている方が少ないこと、判例を知っているが実務は知らない人、そもそも借地の慣行を知らないのでいい加減なことを言う人ばかりだと言う事が、相談者の方の話から気付きました。
    小職はお蔭様で多くの借地に関する訴訟のための不動産鑑定評価を行ってきたので、その都度、判例、取引事例、慣行、について多くの調査を行い、鑑定評価書としてまとめてきたものですから、借地にまつわる殆どの問題に答えることが出来るようになっています。
    ならば、困っている方々にお役立ちできるよう、もっと多くの人に「専門家が相談に乗りますよ」と告知することが大事だと考えたわけです。
    そのために、これまでもロータリークラブでお付き合いのあるタウンニュースさんに話をして、掲載して頂くようになったものです。
    結果的に法的解決を求めるためにはお金がかかることになりますが、その前にまずは相談いただければ、的確な「解決の方向性」を示すことが出来ると思います。その上で、判断いただければいいのです。初回相談無料で対応させて頂いているので、安心してご相談いただければと思います。

  • 冠水リスクの評価について

    カテゴリー:市場分析 2019年10月14日 記事番号:956

    不動産鑑定では、ハザードマップに基づく危険度合いだけではなく、実際の河川氾濫履歴や集中豪雨時の冠水履歴等を調査して、少なくとも「冠水のリスクがある」ことを指摘する。
    価格に反映させるかどうかは、確かに500年に一度の大豪雨という前提条件では、鎌倉や逗子などの太平洋側都市の津波被害を価格に反映させない(※)のと同じ理由で「市場参加者が発生リスクを価格に織り込んでいるかどうか」で判断することになる。
     
    ※2011年の東日本大震災後に鎌倉や逗子、金沢八景まで海岸沿いの宅地が価格低下したが、すぐに元の水準に戻ったことが記憶に新しい。
     
    今回の溝ノ口の冠水事例では、多摩川に流入する平瀬川が「多摩川水位上昇によって平瀬川の水が多摩川に流入できなくなった」ことが原因であると推察されている。

    どういうことかと言えば、

    国土地理院では全国の地図を管理し、公開している。
    WEB上で断面図まで取得することができる。
    今回の冠水が生じた地点の断面図をみてみたところ、やはりそういうことであった。



    図の北側に平瀬川があり、「+」マークの地点が冠水したマンションである。マンションの南側にはテレビクルーたちが待機していた土手がある。断面図は平瀬川の中央から土手までを調べた結果を示している。

    始点の平瀬川中央は「川底」の標高が11.0mである。
    平瀬川の堤防は13mまで積まれていた。
    堤防を越えた地域にマンションがあるが、その地域の標高は最下部のマンション敷地分で10.8mであった。すなわり平瀬川の川底より低い標高にある。
    もし、平瀬川の水が堤防を越えて氾濫すれば、当然にこの最も標高の低い地域に氾濫水が流入し、冠水状態になる。


    では平瀬川がどうして氾濫したか。


    当時は多摩川が氾濫寸前まで水位が上昇していた。

    多摩川の土手の標高と平瀬川の土手の標高のどちらが高いか、そこが問題となる。そこで多摩川を始点として対象地まで断面図を引いてみた。するとやはり予想通りの状況になっていることが判る。