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  • 不動産相続の留意点(1) 「息子に安く売っちゃいけないの?」

    カテゴリー:相続関連 2012年12月29日 記事番号:898

    (写真はマレーシア半島最南端ジョホール・バル市のアブ・バカール・モスク)


    相続において一番頭を悩ませるのが不動産だと思います。
    なぜならば「ウチの不動産は幾ら相続税がかかるの?」という素朴な問いに、答えてくれる人が多くないからです。

    もちろん多くの人は次の事はご存知ですよね。
     (1)土地は相続税路線価で査定される。
     (2)建物は固定資産税課税標準額で査定される。

    さらに相続セミナー等で勉強された方はこんなことまでご存知です。
     (3)借地権や貸家権が付着した不動産は割引されることがある。

     (4)広大地や崖地は割引されることがある。
     (5)居住用不動産や事業用不動産には特別な控除がある。

     

    この辺りまではおそらく多くの方々がご存じだと思います。

    でもね、実はこれだけでは十分ではないのです。

    不動産相続において留意すべき基本的な考え方は以下の通りです。
     ①相続財産(不動産)を減らす。

     ②相続財産(不動産)の価値を低める。

     ③控除適用を目一杯受ける。

    こうした三点の考え方を使い、専門職業家としてお客様のことを一生懸命に考えてあげれば、本当はもっと「戦える余地」があるんです。その点を何回かに分けてご説明したいと思います。


    今日はその第一回として相続財産を減らすために最初にやるべき「贈与」について説明します。



    「息子に安く売り払っちまったら良いんじゃないの?」

     

     おそらく相続を考えられる方の多くは、素朴にこの疑問を持つと思います。
     これって父親(被相続人)の相続財産は減らせるし、息子(相続人)に財産を簡単に渡すことができますよね。極端な話、「1円譲渡」だって贈与じゃない、売買(有償譲渡)だ」って言えますよね。昔1円入札なんてことがありましたっけね(笑)
     もちろん皆さんは「贈与だったら贈与税がかかるけど、あげるんじゃなくて売るなら税金はかからないよね」と思われる方もいらっしゃると思います。でもこれには問題があります。
     ①有償譲渡の場合には譲渡者が受領した譲渡代金に所得税がかかります。

     ②「安く売る」と低廉譲渡と認定され、時価との差額は「贈与」とみなされます。

     

     このうちの①は仕方ないですよね。だから「安く売る」ってわけですから。

     では②はどうなんでしょう。

     

     皆さんに質問です。

     「安く」って言うのは相対的な言葉です。
     高い安いは基準がなければいけませんが、その基準は何だと思いますか?

     

     (選択肢1) 課税通知書に記載された価額である。

     (選択肢2) 相続税路線価より査定された価額である。

     (選択肢3) 当該課税時期における通常の取引価額である。

     

     選択肢1は不動産売買で固定資産税の清算の際に使う「課税証明」に記載された額であり、これをもとに登録免許税や取得税が決まります。課税主体は自治体ですから、贈与や相続を所掌する国税が使う数字ではないですね。だからこれは誤りです。

     選択肢2は国税が毎年出してる金額だし、常識的に言えばこの金額で取引したらなんでいけないの、ですよね。常識ある方なら100人が100人そう答えると思います。相続税路線価は公示価格の8割程度で決まっているし、バブルの頃は公示価格の上昇が市場価格の上昇に追いつかず、結果的に相続税路線価が市場価格よりかなり低い金額で定まっていた時代がありました。

     その当時に流行ったのが、この「相続税路線価での譲渡」でした。

     あまりにそうしたケースが増えたため、国税は次の通達を出しました。

       国税庁通達 直資2-204 「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得し

       た土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の

       規定の適用について」

     http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/sozoku/890329/01.htm

     

     この通達によって、「時価とは、不特定多数の当事者で⾃由な取引が⾏われる場合に通常成⽴すると認められる価額、すなわち、客観的な交換価値をいうもの」とされました。その後は路線価譲渡は低廉譲渡であるとして国税が勝ち抜いてきたんですが、バブルも弾け、地価下落が常態化した中でいつまでも「時価>相続税路線価」とは言えなくなってきました。

     

    とうとう裁判所も面倒になったんでしょうか。
    「路線価で十分だ。国税もいちいち面倒なことを言うな」とばかりの判決を出しました。それが東京地裁平成19年8月23日判決・判タ1264号184頁で、「公示価格の8割で出してる路線価であり、年に2割くらいの変動はあるんだから、路線価で売買したから不当廉価とまでは言えない」と判決しました。

     

    ということで、現状では(選択肢2)でOKと言うのが主流となっているようです。

     

    しかしここにはまだ問題があるのです。

    相続税の査定で問題になるのが路線価による査定方法。

    特に旗竿地での減価割合が少なすぎるのが問題です。

     

    不整形地の場合、国税の査定価格では市場では売れません。

    だとすれば路線価でも高いのです。

     

    だから答えは(選択肢3)であり、特に不整形の土地を所有されている方は「通常の取引価額」を把握した上で対応を考えられるべきです。この価額を決定できるのは不動産鑑定士による不動産鑑定評価書だけです。

     

    以上、冒頭で書きました「ウチの不動産は幾ら相続税がかかるの?」という素朴な問いに答えてくれる人、すなわち「息子に最も安く売ってよい価格を出せる」のは不動産鑑定士という事をお分かりいただけたでしょうか。


  • 早過ぎる解体

    カテゴリー:各種情報 2012年12月26日 記事番号:897

    不動産鑑定士という職業柄、

     

    普段、普通に街歩きをする時にも、

     

    常に、人の動きや流れを目で追い、

     

    建物の構造、築年数や維持管理の程度を査定しています。

     

     

    人の動きは繁華性や収益性を判断する材料となるので重要です。

     

    建物の状態も色々な事例を注意してみておくことで査定能力が高まると思っています。

     

     

    ある日のこと、

     

    不思議な場面に出くわしました。

     

    写真に示す建物なんですが、解体作業中でした。

     

    気になったので近くによって良く見てみたらまだ新しいじゃないですか。

     

     築 年  :10年から15年

     用 途  :居宅

     構 造  :鉄骨鉄筋コンクリート造スレート葺二階建

     延床面積:150㎡から200㎡

     外装内装:高位な品等の材質を使用している

     

    どうみても経済的残存耐用年数は30年以上ある建物です。

     

    「こんな立派な建物をどうして壊しちゃうの?」

     

    素朴な疑問が湧きますよね、普通。

     

     

     

     

     

    もちろん答えは知りません。

     

    しかし不動産のプロの方ならすぐに思いつくことがあります。

     

    「心理的瑕疵」による民法570条適用物件

     

     

    こうした物件では、いわゆる事故物件と呼ばれるものの可能性を考えるのです。

     

    事故物件、すなわち居住者等が建物内で「自殺、他殺」により亡くなった物件です。

     

     

    通常、不動産を買おうとする人は、その不動産の前所有者が自殺や他殺で亡くなったって聞いたら嫌な感じになりますよね。それが心理的瑕疵がある、ということなんです。

     

    宅建業法の重要事項説明では、必ずそうした事故物件の事実は売主から聴取し、さらに裏を取るために近所の方々に聞き込みをするというのが普通です。特に怪しいと思ったものに関しては、それをしないと、宅建業者でなくても、不動産鑑定士であっても「重過失」に問われることになります。

     

    ですから「早過ぎる解体」のあった建物が存していた事実を知ったなら(閉鎖登記簿等で容易に調査可能です)、事情聴取を行う必要があり、それをしなければ宅建業者も不動産鑑定業者も過失責任を免れないことになるのです。

     

     

    では素朴な疑問があります。

    そうした事故物件は「永遠に重い十字架を背負い続けなければならないか」という点であり、時効ってのはないのかってことです。

     

    これに関しては幾つかの判例が具体的な年数を判示しています。

     

    (1)事故死の場合

     事故は心理的瑕疵に当たらない(東京地判 平23・5・25)とされています。

     

    (2)自殺の場合

     まず、自殺した部屋を含む建物が現に存している場合は、賃貸建物では最低でも10年は価値が毀損している(東京地判 平23・5・25)としておりますが、売買の場合はその事実を開示してしまうと買い手がいないので、事実上は建物解体をしないと瑕疵は除去できないと考えられています。解体して更地化した場合、2年経てば空間的瑕疵は免れるという判例(大阪地裁 平11,2.18)もあり、2年から4年程度で瑕疵担保責任から免れるようになる。

     

    (3)他殺の場合

     この場合は大変です。殺人事件が起きて建物を取り壊した更地についても、8年経ってもなお心理的嫌悪は存在するという判例(大阪高裁 平18・12・19)が出ており、特に事件の重大性によって嫌悪の続く期間は長短があると判示されてます。

     

     このように「早過ぎる解体」の憂き目にあった建物については、その理由を十分に調査しないと大変です。

     

     

     なお、写真に示した建物で何があったのかは存じません。

     「早すぎる解体」の憂き目にあった建物というだけのことですので、その旨ご了承ください。

     

  • 「合わせる」のは文化の違い?
    それとも、、、

    カテゴリー:面白不動産 2012年12月23日 記事番号:896

    (写真はノルウェー トロンハイム)

    欧州を歩いていて、

     

    素朴に思ったのは「石造りだから何百年も持つので、歴史的建造物としての街並みが何百年も続くから、建物建築規制が必要なんだろう」と。

     

    実際、欧州はどこも殆どが石造りの建物です。

    農村地区にレンガ造りの建物は見られますが、基本は石造りです。

     

    しかし実は石造りだけではないんですね。

     

    こちらは北欧ノルウェーの真ん中位置にあるトロンハイム市の

    普通商業地域にある商店街です。

     

    ここでは豊富な森林を抱えるノルウェーならではの木造建築が主流です。

     

    見て頂けるとお分かりいただけますでしょう。

     

     ①外壁色の統一性

     ②軒高さの統一性

     ③建物高さの統一性

     ④壁面後退位置の統一性。

     

    お見事です。

     

    これは文化なんだと思います。

    街を構成する一員として、「一員の証しとして建物を街に合わせる」という

    純粋な想いが垣間見られます。

    どんな地方都市に行ってもその文化が明らかに見て取れる。

     

    これは「御上の規制」ではなく、文化として自主規制または「他人をも守らせる」という強い文化的意志を感じます。

     

    少し日本の事例を見返してみましょう。

     

     

    こちらは三浦半島の南端、三崎口の商店街の一角です。

    三崎町は日本有数の漁港として賑わって、その賑わいを支える商業が栄え、蔵の街としても有名です。

     

    この三崎口商店街の街並みは蔵を含めた街並みが形成されていたはずですが、今では相互の建物間のバランスを失っていることが分かります。

    現在、この地域の都市計画は用途地域が商業地域、建ぺい率80%、容積率400%の指定がなされています。

    需要さえあればいつでも10階建てのマンションが商店街の店舗に置き換わります。

     

    トロンハイムの商店街では、おそらく最有効使用は標準的使用と同じ店舗付住宅だと判断されますが、三崎口商店街ではどうでしょう。

     

    こうして街並みは壊れていくんだと思います。

     

     

     

  • この島は幾ら?

    カテゴリー:面白不動産 2012年12月22日 記事番号:895

    (南沙諸島のとある島  シンガポール航路上にて撮影)

    南シナ海に浮かぶサンゴ礁の島、

    この島の値段は幾らなんでしょう?

     

    不動産研究所の不動産鑑定士が東京都に依頼されて尖閣諸島の鑑定評価に行ったことは皆さんの記憶に新しいことと思います。

    そこで皆さんに伺いたいのですが、島の価格はどのように決めるかご存知でしょうか?

     

    この場合、不動産の種別および類型は「更地」ということになります。更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいいます。

    不動産鑑定評価基準では「更地の鑑定評価額は、更地並びに自用の建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。」とあります。

     

    だとすれば取引事例と純収益(賃料収入等)を求める必要がありますね。

     

    まず取引事例ですが、同一需給圏(代替競争不動産の存する圏域)を決める必要があります。

     

    その場合、典型的な市場参加者を見極めることが重要であり、それは後述の最有効使用のによって異なります。

     

    リゾート施設ならホテル経営者なので、同一需給圏は赤道周りの「南の島」が代替競争不動産になりますし、

     

    船溜まりなら政府機関で、その場合の代替競争不動産は緯度に無関係な世界中の離れ小島になるでしょう。

     

    同一需給圏が決まれば、その同一需給圏内で直近に取引された売買事例を調査して、事情補正、時点修正、要因比較等を行って価格を決めることになります。

     

     

    収益価格を求める場合、決めなければならないのが対象不動産の最有効使用です。すなわち「対象不動産を使った合理的かつ合法的な最高最善の使用方法を判断する必要があります。

     

    用途としてはサンゴ礁の島ですからリゾート施設の建設による利用が一番でしょう。だとすれば建造する必要のある施設としては以下のようなものが必要ですね。

     ①リゾート客や各種物資を乗り下ろしできる港湾施設

     ②上水道と下水処理施設

     ③発電設備、変電・配電設備

     ④宿泊施設および遊戯施設

     

    これらの設備を建設し、運営を開始した時に得られる永続的な純収益(=総収益―総費用)を求めます。この純収益から建物帰属純収益(投下資本に元利逓増償還率を乗じて得た額)を控除して、土地に帰属する純収益を求めます。

    求めた土地帰属純収益を還元利回りで資本還元して収益価格を求めます。

     

    この場合の還元利回りは収益獲得の不確実性によって変わります。容易に永続的な収益が得られるなら利回りは低く、変動が大きいと想定される場合には利回りは高くなります。

     

    不動産鑑定評価で最も重要なのは最有効使用の判定です。

    他にも漁船の「船溜まり」でも良いかもしれませんね。

    その場合は港湾施設と給油施設と、付随する上下水道と発電設備があればよいので、投下資本は少なくて済みます。収益は設備利用料と給油・給水料金収入と言うところでしょうか。こちらは安定的な収入は見込めるため利回りは低めでしょうね。

    しかし経営規模は小さく、リゾート施設に比べて投下資本は3桁小さく、収益も3桁小さいでしょう。

    純収益はリゾート施設が大きいでしょうが利回りも大きくなります。船溜まりは純収益は小さいですが利回りも小さいでしょう。どちらが収益価格が高くなるか、収益価格の高い方が最有効使用という事になります。

     

    なお、カジノを作れば収益力は飛躍的に向上します。その場合「合法性」で実現性があるか検討する必要があります。実現性のない使用方法は適用できません。

     

     

    このように、どんな不動産でも不動産鑑定評価基準に則った手法を適用することで、鑑定評価額を求めることができるのです。重要なのは「最有効使用」の判定と、「実証的なデータの収集・選択」なのです。

     

     

    なお、今回の事例ではサンゴ礁の島を選びましたが、地質調査をしないと、本当に堅固建物が建てられるのかが分かりません。基礎を打てないような地盤だとリゾート施設建設に合理性がないので、そもそも成り立ちません。先日の尖閣諸島の調査でも、本当は地質調査が不可欠でしたが、上陸できなかったので、その点に関しては「想定」でしか評価できないことになってしまいました。

     

    また一部報道で「借地料を資本還元して求めた価格」というのを尖閣諸島の価格として出した方がいましたが、それは「現状を所与とする」という極めて限定的な価格です。おそらく法的に自由な使用が認められないというのでしょうから、そうした場合は正常価格ではなくて「特定価格」ということになってしまいます。法律の制限で最有効使用を実現できない場合の経済価値という事になります。

     

     

      ※比準価格とは「多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行

        い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正

        を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求

        められた価格を比較考量し、これによって求めた価格」を言う。

     

      ※土地残余法とは、建物等の価格を収益還元法以外の手法によって

        求めることができる場合に、敷地と建物等からなる不動産について

        敷地に帰属する純収益から敷地の収益価格を求める方法を言う。

        収益価格とは対象不動産が将来生み出すであろうと期待される

        純収益の現在価値の総和を求めることにより求めた価格」を言う。

     

  • ここまで揃うと大したものです

    カテゴリー:面白不動産 2012年12月21日 記事番号:894

    (写真はベルギー ブルージュ)

     

    欧州では、都会だけでなく、地方都市でも建物に対する厳格な景観制限がなされているようです。もちろんその多くは「建物が連担する地区」の話であり、大抵は商業地です。

     

    ブルージュは「北のベニス」と呼ばれる風光明媚な観光都市です。写真は商店街の一角。目抜き通りではなく、少し住宅地に近い地区にある街路を撮影したものです。

     

     

    これらの建物を見て頂くと以下のような制限があることがわかります。

     ①高さは二階建に屋根裏が取れる程度の12m以下

     ②軒高さ8mに合わせる。

     ③構造は石造または鉄骨造とする。

     ④色は白、ベージュ、赤紫、またはそれに類似する色とする。

     ⑤街路面の1階は店舗とし、ショーウィンドを設置する。

     

    おそらく都市計画法等の制限としてここまで決まっているはずです。

    日本でもしここまで決めたらどうなるでしょう。
    制限するのは景観法に基づく景観協議会の決定、都市計画法に基づくまちづくり協議会の決定となるでしょうが、協議会決定は「制定と改定は全員の合意」が必要です。上記のような合意が日本でも取れると良いのですが、さすがに「全員の合意」というのは難しいでしょうね。

     

    日本では「反対者を除いた賛成者による協議会の結成」がなされ、反対した家は協議会の制限をうけません。すると「一軒だけ」けばけばしい家や、にょきっと頭を出した高さの家が街の中に出来上がることになります。

    本当は災害で滅失した後の街づくりで、こうした協議会の制限を設けると、街並みがそろって綺麗な町が出来上がるものなんですが、残念ながらそうした文化は日本にはありません。実は神戸でもそうした話は出ましたが、「景観なんて二の次」になってしまいました。

     

    また用途制限にしても、例えば墨田区両国の馬車通りでは地区計画で「馬車通りに面した建物の1階は店舗とすること」という定めがありますが、無視してマンションを建てている業者も多くみられます。罰則がないと無視される、それが日本の現実です。

     

     

    なお、こうした景観の優れた街づくりをすると、その地区全体の資産価値が高まることになります。特に商業地等では回遊性や視認性が高まることで集客力が向上し、収益価格が上昇します。銀座や横浜の伊勢佐木長者町の街づくりに関する地区計画がそうした制限を与え、そしてそれを全員で遵守することで、整備された街並みが出来上がっているのです。

    「景観なんて二の次」にしたおかげで、結局機会を失ってしまう。

    勿体ない話だと思います。

     

  • 残すのは皮一枚だけ

    カテゴリー:面白不動産 2012年12月20日 記事番号:893

    (写真は英国 ロンドン)

    欧州の街を歩いてわかるのは、

    「どの街も街並みをとても大切にしている」という事です。

     

    何百年も前の石造りの建物の街並みが大切にそのままの形で残されている、

     

    そんな風に見えます。

     

    しかし、実際にそんな事が本当に可能なのでしょうか。

    人は文明進化とともに生活スタイルを変化させています。

    例えばエアコン、

    いつまでもマントルピースの暖だけで冬を過ごせるわけもなく、

    毎冬ごとに大量の石炭を燃料用にオフィスに運び込むことも現実的でない、

    ロンドンの街を歩いていてその回答を見つけました。

     

    この写真の右側に工事の足場を掛けている建物があります。

    「大規模改修工事でもしているのか」と一見見えます。

     

    しかし実際に現場に行ってみると異様な光景が見られます。

     ①街路面側の壁を「皮一枚」だけ残して、建物はすべて取り壊す。

       工事中は壁はつっかえ棒で立てておくだけ。

     ②建物は完全に新たな建物として建替えるが、幅と高さは「街路側外壁」

       をはみ出さない様な寸法上の制約のもとに設計される。

     

    ロンドン市内では「つっかえ棒で外壁を支えて工事している場面に幾つも出くわしました。写真に残してこなかったのが残念です。

     

    このように「景観上」の外観は残して、建物自体は自由に建て替えることができる、という合意が前提として街づくりが進んできたという事なんですね。

     

    鑑定評価をする上では、「建替え更地価格」の中に制約事項として建物高さや幅だけでなく、用途的な制約も当然加わることになります。すなわち間取りは窓で決まりますので、外観上の窓の位置や大きさによって、おのずと用途が制限されてしまうことになります。

    ただ、欧州の方はおおらかです。

    前の用途が何であれ、店舗や住居やオフィスへと用途変更されて入れ替わります。外観で用途が決まらない。

    こうした点は大変興味深いものがあります。

     

    日本では外観でマンションかオフィスか店舗かが決まってしまいますが、欧州ではそんなことは一切ないのです。これも文化の違いでしょうね。最有効使用というのは実際には文化に依存するものなんですね。

     

    もちろん横浜や神戸等でいくつか見られる「重要文化財指定建物」内にしゃれたレストランやブティックが入っている、といった例がありますが、さすがにオフィスや住居にはなってませんよね~

  • 隣の建物に寄りかかられてしまった場合

    カテゴリー:面白不動産 2012年12月19日 記事番号:891

    嘘のような光景ですが、実在する建物です。
    これらの建物は各々が独立した建物なのですが、


    さて、
    この右から二番目の建物の鑑定評価を依頼された場合、
    どのように考えればよいと思いますか?
    現況、右から三番目のHOTELが対象不動産に寄りかかってます。
    もちろん明らかに越境もしています。
    だとすると対象不動産を建て直したいと考えた場合、
    敷地境界ギリギリに建物建築が出来ないという状況です。

    通常、隣地からの越境がある場合、裁判所はよほどのことがない限り「撤去命令」までは出してくれないと考えるべきです。もちろん「倒壊家屋」なら話は別ですが、原状で用法に支障なく利用されている建築物や造作物は難しいので、通常は念書をとって「建替えるときは越境を解消します」でおしまいということになります。

    ちなみに欧州では数百年も建替え無し(笑)で住み続けられてしまいますので、実態的にはこの傾いたホテルはそのまま永続的に存在することになると考える必要があります。

    ということで鑑定評価の際には、隣接建物が傾いた状態を所与としての最有効使用建物建設を考えねばなりません。越境敷地分は建ぺい率や容積率対象にもなりません(実効的に占有できていない)ので、その敷地部分はないものとした設計を施す必要があるので、減価して鑑定評価額を決定することになります。

    (オランダ アムステルダム)

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