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業務紹介の記事一覧

  • 投資用不動産の経営改善(救済支援)について

    第3回.これが本当の事業収支シミュレーション

    カテゴリー:業務紹介 2018年9月25日 記事番号:952

     事業収支を検討する上での重要事項として、①収益予測のための賃料の将来予測、②発生経費や空室損失等のリスク発生要因を加味した将来費用予測、についてどのように考えるべきかを解説して来ました。ここではさらに「借りた金をいつまでに返せるかどうか」について明らかにすることを目的とした「事業収支シミュレーション」の方法について解説し、事業再生の場合の金融機関に対するリスケ(Re-schedule=弁済計画・条件の変更)を交渉するための検討資料の作り方について解説させて頂きます。

     

    1.通常の事業収支の検討結果

     下図に基本的な計画検討結果事例を示します。

     対象不動産は37戸の築30年の賃貸マンションで、満室想定賃料が年額3,500万円、3億円で購入したとします。表面利回りは11.7%となります。全額借入金で賄ったとして、金利は2.0%で固定とします。なお、金利について当初10年間は固定で考えることは了解貰えますが、通常は11年目以降に金利上昇を見込むことが必要です。変化幅は融資担当者と相談します。行内稟議で通るような条件設定が必要ですので。



     まず空室率(入居期間および退去後の空室期間から計算する)の経時変化を加味した値を乗じて運営収入を計算します。次にPM費や修繕費等の管理費に、原状回復費用(入居期間で除した年額に戸数を乗じる)と仲介費用(同左)および火災保険や固定資産税等を加えて運営費用を求め、長期修繕費用と併せて運営収入から控除して純収益額を求めます。この純収益額から減価償却費や支払利息を勘案した所得税を控除した金額が弁済原資となります。この弁済原資から支払利息を控除した額が元本弁済額であり、元本弁済額を元本から減額した金額が「元本残高」、弁済原資から元利金等弁済額を控除した金額が「剰余金」になります。

     計画では10年目に長期修繕費用として3,000万円の支出を予定しています。外壁・屋上防水および貸室内の設備更新を考慮した金額を見積もります。エアコンや給湯器取り換えなどは一斉に行った方が安く済むものですので。そうした資本投下を行うことで若干の賃料増加が見込めます。

     それらの計画を反映した事業計画図が上図となるわけです。

     

    2.事業再生の場合の事業計画策定

     通常の投資用不動産向けの融資では、事業計画がしっかりしていれば「2.0%程度の金利」で金融機関から融資が受けられます。今回のスルガ銀行の第三者委員会による調査結果によれば、スルガ銀行が個人投資家向けに融資した「資産形成ローン」の金利は4.5%でした。通常の金融機関がいわゆる「要注意債権」向けに付しているレベルの金利を始めから取っているわけです。通常の金融機関で「要注意債権」認定した債権は、所定の引当金を当てねばならず、「早期の債権回収を図るために金利を上げる」という考えで設定するものです。

     もし、本件の対象不動産に金利4.5%が付されたらどうなるでしょう。

     当然に元利均等弁済額が金利上昇分増加し、毎年の剰余金が減少します。その様子を下図に示します。

     



    当初10年間でも剰余金を積み立てることが出来ず、10年後の長期修繕は全額持ち出しになります。その後も収入が元利均等弁済額を下回るために赤字が嵩み、25年後には累積赤字が8000万円を超える水準になるのです。

     スルガ銀行の融資は「賃料収入の70%+個人所得年収の40%で弁済できる額」ということになっていますので、毎年数百万円の赤字を給与所得から補填することになります。そうした弁済計画をスルガ銀行は想定しているのか、していないのか、融資の判断として融資決定をしてきているわけです。

     本件では表面利回りで11.7%の「ごく普通の」物件でさえも、家賃の低下と費用の上昇という現実的な状況を踏まえた事業収支で考えれば、4.5%の高金利では破綻します。ましてや個人投資家が悪徳不動産業者の甘言によって高値掴みさせられた場合には、購入当初から高額な補てん金を支払わされることになります。実際、現在小職が救済中の個人投資家の方の場合で、満室想定で8%程度の表面利回りでしたが、購入した翌月と翌々月を除いて、3か月目から毎月20万円前後の元利均等弁済金の不足が露呈していました。

     第二回の解説でもご説明したように、よほど低金利で融資を受けない限り、満室想定表面利回りで8%などという低い表面利回りでは、債務弁済さえもままならず、「不動産投資」とは言えない状況になってしまうのです。

     

     もし、満室想定表面利回りで8.0%で本件不動産を購入した場合を考えます。賃料収入が年額3,500万円なので、8.0%ならば購入金額は4.38億円となります。普通の取引金額よりも1.38億円も高い金額を支払って個人投資家が買わされたという事を意味します。おそらくそうした取引は「三為取引」と呼ばれる、悪徳不動産業者が使う詐欺まがいの売買だと考えられます。

     当然に金利4.5%25年弁済では全く返せません。個人破産するしかない状況です。

     そこで「どのような条件にすれば弁済できるようになるか」を考えることになります。

     

     例えば「金利1.0%」まで緩和して貰うことを考えます。これは金融機関にも重大な瑕疵がある場合の水準です。通常の融資ではそこまで下げることは極めて困難だと考えられます。しかしそれでも利回り8.0%で買ってしまうと返せないのです。

     下図に25年弁済のままで金利を1.0%まで緩和して貰った場合の事業収支を示しますが、元本である購入金額が高過ぎるために、賃料収入が25年の元利均等弁済額を下回ってしまっているのです。



     そのため弁済期間についても変更して貰う必要があります。

     図に示すように25年弁済ではなく、37年弁済にして貰えれば弁済完了できる計画が立てられることが分かります。もちろん稼働期間を延ばすのですから、長期修繕をもう一度行う必要があります。最小限の1,000万円に抑制するとして、25年目に長期修繕を行って、37年間の賃貸事業を完遂させる計画を示すことで、再生計画を金融機関に認めて貰う交渉を行うものです。

     

    3.さいごに

     三回に渡って投資用不動産に係る事業再生方法の具体例を説明して来ました。その中で、①賃料が長期的に低下して行くこと、②築30年を超えると空室期間が長期化し、原状回復工事の貸主負担も増大して行くこと、そのために築20年超マンションを「満室想定表面利回りで8%程度」で買うと破綻することを指摘して来ました。

     投資用不動産を購入した個人投資家が破綻する場合に、金融機関に「融資責任」が問えるかどうかが問題になります。金融機関に帰責性があれば、金利減免まで含めた交渉が出来ます。帰責性が無ければ、「自己破産させた場合と、金利・弁済期間を変更した場合と、どちらが多くの債権回収が出来るか」を示すことで、交渉することになります。正に通常の「事業再生」の手順です。

     本当は認定支援機関として、国の補助を受けて事業再生のための計画策定をおこなえればよいのですが、「不動産事業は副業」の個人投資家は国の救済対象から外れているのです。そのため、国の補助金を受けられない状況で事業再生を行う必要がありますが、小職としては何とか一人でも多くの方を自己破産から救えないかと活動しておりますので、最小限の対応費用で対応させて頂きたいと考えています。

    以上

  • 投資用不動産の経営改善(救済支援)について

    第2回.築20年超マンションに気をつけろ

    カテゴリー:業務紹介 2018年9月23日 記事番号:950

    1.はじめに

    投資用不動産、特に中古マンション投資の場合の留意点は、築年経過(老朽化)に伴う競争力低下が賃料低下として現れることを第1回に説明しました。実は老朽化に伴う変化は賃料低下だけではないのです。プロの投資家は知っているか、または直感的に判っていることなのですが、その点を個人投資家の方々はあまり御存じないと思います。

     具体例を示します。下図に中古マンション一棟物の成約実績を示しますが、この事例は横浜市郊外の住宅地に存する物件の売買事例です。購入者の属性を分けて示していますので、図で見て分かるように、個人は表面利回りで8%程度でも買いますが、法人は表面利回り10%以上でないと築20年超の中古一棟は買わないのです。

    その理由を以下に説明します。


    2.老朽化に伴う空室期間の長期化

     横浜市郊外の住宅地にある一棟マンションの不動産鑑定評価のための調査を行った際に得たデータですが、老朽化に伴って空室期間が徐々に長期化することが分かりました。その状況を下図に示します。図には移動平均曲線を合わせて示しています。

     築20年程度までは退去後2ヶ月程度で次の入居者が決まるのですが、築20年を超える辺りからワンルームタイプでは徐々に退去から次の入居者が決まるまでの期間の長期化が顕在化し始め、平均で4カ月程度になっています。ファミリータイプでも平均で2カ月を超え始めます。その理由についてオーナーに聴取したところ、「築20年を超えた物件だと、入居希望者が検索もしてくれなくなる」のだそうです。SUUMO等で賃貸マンションを探す方は「築年数」の項目の上限を設定するようで、それが「築20年以下」がとても多いそうなのです。そのために検索物件に築20年超の物件が現れないという事が現実に起きているそうなのです。



    3.居住期間の短期間化

     空室率の長期化と併せて、マンション経営を悪化させる要因は「居住期間の短期化」です。賃借人は住み心地が良いと思えば2年毎の更新時にも更新料を払って更新して入居を継続します。特に建物が新しい間はそう思う人が過半で、平均入居期間も5年程度を維持してくれています。オーナーとしては入居者が長く住んでくれるほど安定した収入を得られますので、築年の新しい間は安定した経営がなし得ます。

     しかしやはり築20年を超える辺りから、徐々に入居者の居住期間の短期化が顕著になり始めます。その状況を下図に示します。図は入居から退去までの入居期間を、入居時(契約時)を横軸にプロットしたものです。同様に移動平均曲線を併記しました。バラつきは大きいものの、ワンルームタイプもファミリータイプも、築20年前後から平均2年で退去していってしまう傾向が顕著になっていることが分かります。

     なお、このマンションのオーナーはこの入居期間の短期間化に危機感を感じ、ある工夫を始めたそうです。その施策が功を奏して、特にワンルームで「短期退去者が殆ど出ない」状況に改善していました。オーナーが何も工夫をしなければ、築20年を超える賃貸マンションでは、2年更新の度に入居者が退去していってしまう可能性が高まるのです。



    4.リフォーム費用の賃貸人負担の増大

     入居者が退去した後に、次の入居者に気持ち良く入って貰うためには、室内が綺麗になっていることが重要です。新築、築浅の間は特にお金を掛けずとも、水回りのクリーニング程度でも良いのですが、建物が老朽化してくると次第に交換すべき内装部品も増えてくるものです。外観が旧くても中が綺麗なら、入居希望者は借りてくれるものです。そのため、クロスやクッションフロアの全面交換や、水回り設備等の順繰りの更新工事などを入れて行かないと行けなくなります。老朽化してくるとファミリータイプでは毎回10万円を超える多額のリフォーム工事が必要になってくるのです。

    しかも東京都条例が先行して現在は国交省令で厳しく指導され始めた「賃貸人の修繕責任」により、賃借人の原状回復工事費用の負担が制限されるようになり、近年では毎回の退去の度に賃貸人が多額の負担をしなくてはならない状況になりつつあります。

     このため築20年を超えるマンションでは、毎回の退去の度の貸主負担の現状回復費用は多額化しています。その状況を下図に示します。



     築20年前後で設備の更新が行われるために原状回復費用の貸主負担額は増大します。さらにクロスやクッションフロアの張り替えに要する貸主負担も増大しており、退去の都度の負担額は大きな金額になっているのです。

     

    5.仲介料の増大

     空室期間の増大に現れているように、老朽化した賃貸マンションでは容易に次の入居者が決まりません。「建物が旧い」というだけで競争力が落ちてしまっているのです。それでも何とか入居希望者を連れて来て貰いたいオーナーは、不動産業者の方に「広告料」を支払って、優先的に紹介してくれるようにお願いすると言う慣行も常態化しています。広告料はオーナー負担です。老朽化すると仲介のためにオーナーが支払う費用も増大してくるのです。

     

    その他にフリーレントや賃料値下げなどを提案される場合もあります。フリーレントも空室も賃料未収受期間の増加であり、賃料値下げと同様に売り上げ減少となります。一方で原状回復工事の貸主負担額の増大、入居期間の短縮化に伴う仲介料負担の増大および広告料等の負担増は費用増大となります。

    老朽化による「収入減&支出増」によって、不動産事業の純収益が減少して行くのです。それが築20年マンションの実態なのです。


    プロはそれを知っているから、最低でも「グロテン」、すなわち表面利回りで10%、できれば12%は無ければ収支が合わないと言うのを体験的に知っているので、20年超の中古マンションで10%以下の物件など見向きもしないのです。

    投資判断は純収益(Net Operating Income)で判断するものです。収入の下振れリスク、支出の上振れリスクを織り込んだ純収益を計画することで、安定な不動産収入が得られるようになるわけなのです。

  • 投資用不動産の経営改善(救済支援)について

    第1回.地域の賃貸市場を知る

    カテゴリー:業務紹介 2018年9月18日 記事番号:947

     中古マンションを購入する際の事業計画がしっかりしていれば、購入価格が適正かどうか、借入金利が妥当か(返せるか)などの基本的な事項で騙される事はない筈です。問題はその計画を「買主の利益を守る立場で」立てることが出来る人が居ないことなのです。

     スルガ銀行関連の不適切な融資において、「シミュレーション」と業者が呼んでいるものが、実に安易な事業計画書になっています。問題はその計画書が「売主の利益を最大化する」ために作成されていること、そしてその内容が全く何の検証もされないままにスルガ銀行内で融資許可されてしまったことなのです。第三者委員会の報告(P.92)によれば事業計画書の前提となる賃料収入実績(レントロール)までもが偽造されていた(させていた)ことが判明しています。売り側の不動産業者と融資元の銀行が結託したら、素人の買主は為す術がなくなってしまいます。

     既に購入してしまった投資用不動産については、何とか収益力の向上を図ることが最重要課題となります。不動産鑑定士としてこれまで実地に調査して得てきた知見を基に、収益力改善のためにどのように経営改善計画を立てればよいのかについて説明させて頂きます。

     第1回は地域の賃貸市場を知ることから始めます。

     

     地域の賃貸市場を知るというのは、購入を考えている地域の賃貸マンションが幾らで貸されているかをまず把握することなのです。ある程度立地が限定された場合、賃料に最も影響を与えるのが実は築年なんです。

    下図に麻布・赤坂・青山・六本木というマンション賃料の高い地域の賃料調査結果データを示します。



    図に見られるように築年の新しい(竣工年が新しい)ほど賃料は高くなり、古いマンションほど下がりますが、この地域では築年で30年を超えると、「それより下がらない傾向」が見られます。人気の地域ではこうした傾向が見られます。他の地域では築30年を超えると途端に人気が無くなり、賃料には反映されないまでも空室期間の長期化や居住期間の短期間化(更新せずに2年で出ていく人が増える)として現れる場合が多いので注意が必要です。地域毎の市場の動きを的確に把握することが重要です。

     また、この地域では築年が新しい物件で「募集賃料」と「成約賃料」に乖離が見られます。一般の投資家がSUUMO等で簡単に見れるのは「募集賃料」だけですから、賃料の高い競争の激しい地域ではこうした乖離にも注意を払う必要があります。


    下図には城北地区の代表地として王子駅徒歩圏内のワンルームマンションの賃料相場を示しています。港区と比べると分かるように築30年以降も若干低下が緩やかになってはいるものの低下が続いている傾向が分かります。このように地域によって賃料相場の築年の影響度合いが異なっているのです。



     収益不動産の事業計画を策定する上で、賃料の将来予測は重要です。

     30年前に建てられたマンションの賃料が、現在の新築マンションの賃料に比べてどの程度低下しているのかを調査することで、現在新築のマンションの30年後の賃料をおよそ予測することが出来ます。これは実際に特定のマンションの30年間の賃料推移を調べてみれば、地域のマンションの築年毎の賃料分布で、「築年と賃料低下の関係」が「経過年数と賃料低下の関係」と一致していることが確認されています。

     こうした調査が事業収支の予測に有用であることが分かりますし、金融機関に提出する事業計画書には、こうした賃料市場の分析結果を添付することで、実証性の高い計画であることを示し、低金利での融資を獲得することが出来るようになるのです。


     次回は空室率の増加や退去後の貸主負担のリフォーム費用の経年増加について解説します。

  • 不動産投資に騙された投資家を救え

    カテゴリー:業務紹介 2018年9月14日 記事番号:945

    1.事件の概要

    お盆前の8月のある暑い日のことでした。

    知り合いの保険営業の方から「私のお客様で不動産投資を失敗して困ってらっしゃる方が居るので、一度、相談に乗って貰えないでしょうか」と打診されたので、すぐに面談の日程を決めてお会いしました。「サブリース契約しているマンションの家賃が2ヶ月も滞納されてローン返済に困っている」ということですが、よくよく聞くと極めて典型的な悪徳不動産業者による詐欺まがいの取引の手口でした。


    依頼人は年収1,000万円を超える比較的高収入のサラリーマンの方でした。定年を前に不動産投資に興味を持ち、不動産投資セミナーに参加しました。平成27年の春のことでした。そこで出会ったカリスマ講師に相談した所、すぐに不動産デベロッパを紹介され、投資用新築マンションを勧められるままに購入しました。城北の駅徒歩圏のワンルームで2500万円を金利3.5%25年返済のフルローンで某地銀が融資しました。

    買う前に「月1万円程度の多少のマイナスになるよ」と言われていましたが、蓋を開けてみると、サブリース賃料からローン返済と管理・修繕費を支払うと4.5万円の毎月の持ち出しになりました。

    投資用マンションを購入したのに、毎月のキャッシュフローがマイナスではおかしいのではないかと憤慨し、カリスマ講師に再度相談に行きました。すると不動産コンサルと名乗る方を紹介されて「キャッシュフローを改善するために1棟物の中古マンションを購入しましょう」と勧められ、すぐに「良い物件がありました」と大阪の中古マンションの広告を持った不動産業者Aを連れてやってきました。平成2712月、「これを買えばキャッシュフローが改善される」という口上に従って、同じく某地銀の担当とも会って健康状態や給与収入などの情報提供をしたところ、即日ローンが決定して、最初に相談してから1週間で大阪の中古マンションが契約・引き渡されました。契約の際に不動産業者Aは「今の持ち主からウチが買ってからお客様に引き渡しますから安心してくださいね」と言われたことに、意味もよく分からず重要事項説明書を承諾されたそうです。


    瑕疵担保期間の2年が過ぎ、平成302月に販売元の業者Aがサブリース契約の解除を申し出てきました。困った依頼人は再度カリスマ講師に相談に行った所、さらに異なる不動産コンサルを紹介され、「ウチがサブリースしますよ」と言ってきたので、業者Aから5月に管理を引き継がせました。しかし、そのコンサルはサブリース賃料を払わず、電話にも出なくなりました。

    2.事件の構図

    相談を受け、登記情報を取得して何が起きたのかを調査しましたら、すぐにこの事件の構図が理解できました。前々主が平成17年に購入した時に7,200万円の根抵当を付けて融資を受けていました。そして前主が平成25年にこのマンションを購入した時には6,120万円の根抵当が付けられていました。マンションは平成元年築なので、築17年で7,200万円、築25年で6,120万円と、建物老朽化と共に担保価値が徐々に低下して行くのは当然のことで、通常の取引が行われてきたことが分かります。


    しかし平成27年におかしな取引が行われました。9,170万円の融資が同某地銀によって実行されているのです。前主の購入金額よりも3,000万円以上も高い金額での取引が行われたのです。さらに調査を進めたところ、前主が売却した際の媒介業者から「前主が売ったのは不動産業者Bだった」と訊き出しました。しかも売買契約書に記載の売買金額は1200万円であり、10%が内金で別途支払われることになっている売買契約でした。



    それで全ての取引内容が分かりました。その構図を図に示します。前主はたぶん「善意(=不知な人)」ですが、それ以外のプレイヤーは全てグルです。


    不動産コンサルは仲間の業者Aに物件を探させ、AはBが知っている物件をコンサルに紹介し、コンサルとAは投資家に「Aの売物件」として取得を持ちかけます。代金全額を金融機関から出させるために、「融資金額が売買金額の90%になるように売買金額を上乗せ」して融資を決めさせます。融資が下りた時点で、Aは自己の取り分とコンサル支払い分、金融機関へのキックバック分()を差し引いてBに支払い、BはAから貰った代金から自己の取り分を差し引いた金額を前主に支払って売買契約を完了させます。前主に金が払われた時点で司法書士を呼んで「第三者のためにする契約が行われた」として法務局に登記申請し、所有権移転が完了します。謄本には前主と後主の名前しか残らず、業者A、Bは売買契約したにもかかわらず一円も自己資金を遣わずに譲渡利益を獲得することが出来たことになるわけです。

    そしてその譲渡利益の源泉は、前主から買って依頼人に高値で売りつけた差額をグルである各プレイヤーが分配したものであり、その源泉を生み出したのが、某地銀が融資したお金だったというわけなのです。


    3.再生への手順

    相談を受けてすぐに知り合いの大阪の不動産業者に現地を見に行って貰ったところ、玄関前には生ごみが散乱していました



    さらに共用部の電気と水道もコンサルが支払っていなかったので止められていたそうです。管理が崩壊していました。正式に事業再生の依頼を受け、弁護士を付けて、逃げた不動産コンサルをテキスト ボックス: 図4捕まえて管理契約を解除させ、鍵を取り戻して、賃料支払口座を変更して、新たな管理会社を探して運営の正常化を図りました。

     

    私はこの事業再生業務を受任する際に、依頼者に言いました。

    「あなたが被害者だと思っているなら、この仕事は受けません。投資の失敗であり、自己の判断の誤りだったから何とかしたい、と言うなら、喜んであなたの再生のお手伝いをさせて頂きたい」と。

     

    弊社は経産省から認定を受けた、中小企業のための「経営革新等支援機関」ですので、事業再生を行うのが仕事です。特に不動産収益事業の事業再生を得意としておりますが、手順は一般的な事業再生と同じなのです。すなわち以下の手順が基本となります。

    収益事業のコスト構造の見直し、収益増大の方策の検討と実行
    (業務リストラ)

    債務の返済条件の見直し交渉(財務リストラ)

    実現可能な抜本的経営改善計画(実抜計画)の作成と、
    利害関係者の合意取り付け、計画の実行

    この場合、業務リストラでは管理適正化と募集再開(既に半数近い部屋が空室になっていた)を行い、さらに毎月の出血を抑えるために元本弁済猶予を主とする支払条件の一時的な変更を交渉(弁護士担当)し、その後に、長期修繕費用や賃料の将来見通しを調査して、精緻な事業収支を求めます。その上で「幾らなら安定して払って行けるか」を明示した実抜計画を策定し、金融機関に合意を求めていくことになります。自己破産されるより再生計画に基づく弁済計画を認めた方が回収可能な債権額が多いことを示すことで、本実抜計画の承認を獲得して行くことになります。

     

    先日、スルガ銀行に関する第三者委員会の調査報告書が公表されました。

    本件は極めて典型的な事例だと思います。第三者委員会報告書の13ページに記載された融資分類によれば、話題になったシェアハウスは1割にも満たない融資額であり、大半が中古マンション等向けの融資です。今回の依頼主と同じように自己破産に怯えてらっしゃる方が多くいらっしゃると思います。またスルガだけでなく他の銀行でも類似した事例があるようです。

    同じスキームで救済できると思います。お困りの方がいらっしゃったら是非、お声がけください。

    以上

  • 認定経営革新等支援機関(認定支援機関)に登録されました!

    カテゴリー:業務紹介 2015年5月26日 記事番号:943

    経済産業省の認定経営革新等支援機関(認定支援機関)に弊社が登録されました。

    既に本ブログで紹介させて頂いておりますように、弊社では中小企業のオーナー経営者の個人資産を守るために、収益不動産事業による事業再生を支援しております。その支援業務に対する経産省からの補助金を受けることができるのが認定支援機関です。


    昨年までの5年間に大田区内で200坪以上の土地の取引がなされた事例を下図に示します。大部分が中小企業の経営者が、事業資金のために銀行融資を受けるために担保にしていた自宅や工場等の敷地だと思われます。


    かなりの割合でこれらの土地には不動産業者による収益マンションが建設されていました。おそらく事業再生支援できていれば、自宅や工場敷地を手放さなくても済んだのではないかと思います。

    だからそれを助けたいと思っているのです。


    どうぞお気軽にご相談下さい。







  • ーーー本当の企業再生への道(4)---
    「不動産鑑定士が作る実抜計画」

    カテゴリー:業務紹介 2014年8月20日 記事番号:941

    最終的に実抜計画として以下の計画を策定し、バンクミーティングを経てリスケ了解とニューマネーの融資了解を得て、全ての計画は実行に移されることになりました。特に下記のAからEの5条件がキモとなりましたが、不動産鑑定士による実証データに基づく説明により、金融機関での稟議は極めてスムーズに通ったことは当然の結果でした。

     (脚注)
    「バンクミーティング」
      : 債権者会議です。企業再生の場合はもっぱら金融機関と保証協会が出席します。ここでは実抜計画に基づく新たな弁済計画や融資条件について説明され、全行の合意を取り付けることになります。

    「リスケ」
      : スケジュールを練り直すことです。特に重要なのは元本返済の猶予について協議がなされます。通常の融資は元利金等弁済で返済されていますが、債務者の事情でどうしてもキャッシュが回らなくなったとき、新たな手立てを講じるまでの時間的猶予が必要な場合が多いので、その猶予期間は元本返済を待ってもらいます。もちろん利払いは継続しますので金融機関に対しては損をしないような提案をすることが重要です。

    「ニューマネー」
      : 再生企業に対しての追加融資です。そもそも現行債務の弁済が滞っている状況なのに、さらに追加の融資をするというのだから金融機関は抵抗があります。しかし追加融資をすることでキャッシュフローが改善され、現行債務と併せて追加融資分も返済されることが確実視されるなら、通常融資と同じ審査基準で融資を行うことが出来ることになり、融資実行されることを言います。


    (1)純収益の査定
    純収益の査定に当っては、以下の5項目の前提条件を設定しました。

    【前提条件】
    ①競争力は標準的(実質賃料ベースで3,300円/㎡)であると査定する。
    ②剰余金は「借入金利-1.0%」で運用できるものとして積み立てを行う。
    ③「剰余金累積>元本残高」になった時点で一括返済する。
    ④相殺適状の欠損金を節税に最大限活用する。
    ⑤他の条件は以下の通り。

     A.実質賃料は初期3,300円/㎡から5年毎に3%ずつ徐々に低下していく。
     B.共益費は初期8,000円を取れるが、徐々に取れなくなって最終的に2,000円まで下がる。
     C.空室率は初期4%から5年毎に1%ずつ徐々に増大して30年後に10%まで上昇する。
     D.固都税は土地は現在額で一定を仮定、建物は47年間の定額法による推定額とする。
     E.賃料集金等の賃貸管理業務は外部委託しないオーナー管理とする。

    (2)キャッシュフロー計算
     15年目に既存アパートを解体して更地化し、売却収入で累積債務の繰上返済を行います。
     約定金利3.0%は平成30年度まで固定です。貸出金利が「長期金利+1.0%」までで定められると想定した場合、「GDP>長期金利」の国債返済の前提条件を勘案すれば、長期金利が2.0%以上まで上昇することは想定し難いと判断します。このためキャッシュフロー計算に当っては3.0%を上限と考えます。 なお、政府は今後10年間の経済成長(GDP増加率)を年率2.0%と想定していますが、これを上回る成長が生じた場合、金利も想定以上に上昇する可能性がありますので、最大4.0%を想定してその影響を評価します。





    (3)評価結果
     想定される金利上昇局面まで織り込んだキャッシュフロー計画を検証した結果、金利4%までであれば問題なく弁済可能であることを確認しました。

     ケース1:金利3.0%のまま一定で推移した場合
      →29年目の平成56年2月期までに一括弁済で全額を完済する見通しが得られた。

     ケース2:金利3.0%から10年目の平成36年度に金利が4.0%に上昇し、
          その後4.0%で推移した場合
      →31年目の平成58年2月期までに一括弁済で全額を完済する見通しが得られた。


    (4)金融機関へのお願い
    ①弁済スケジュール
     ・信用保証協会付融資については、平成27年5月までの期間、
      返済をご猶予頂き、その後、期間20年に引き直した月額返済額にて
      支援頂きたい。
     ・プロパー融資については、長短の借入金を一本化し、新たな1本の
      長期融資として適切な期間(20年)に切り替えて頂きたい。
     ・その上で、収益マンション竣工までの期間の元本返済を猶予頂きたい。
    ②建設費用の新規融資
     ・収益マンションの建設費用及び付帯費用について、新たな融資を
      お願いしたい。
     ・当該新規融資についても収益マンション竣工までの期間の元本返済
      を猶予頂きたい(利息のみ弁済)。

     こうしてバンクミーティングを経て本実抜計画は了承され、現在はマンション建設が行われています。

    ================================

    「全ては依頼者のため」
     もちろん関係者全員が納得しなければなりませんので、許容できる範囲での協力を得て、誠意のある弁済計画を策定することが重要だと思います。本来は企業再生時に依頼者である社長のわがままは通ることは無いのですが、今回は特殊でした。

    「逃げたらダメ」
     逃げずに誠実に約束を果たしていく姿勢を見せれば、関係者は必ず協力してくれると信じていいと思います。経営者の誠意を果たすためのお役立ちをするのが弊社の役割だと考えています。

     実は過剰な借入金があるというのは、社長の個人資産があるからなんです。
     ある意味幸せなことなんです。
     でもそれを本当に有効活用されているでしょうか。

     騙されてはいけません。
     本当の味方が誰なのか、真剣に良く考えて下さい。

    ==========================================

    写真はノルウェー・オスロのヴィーゲラン彫刻公園で見かけた彫刻の写真です。この女の子の目が凄い。
    何か男の子が悪さしたんですよね、きっと。

    悪いことしたら睨まれてしまいます。
    悪いことしないようにしましょうね。


  • ーーー本当の企業再生への道(3)---

    「二つのメニュー」の謎

    カテゴリー:業務紹介 2014年8月18日 記事番号:937

    実抜計画の詳細を説明する前に、
    「二つのメニューの話」を少し先にさせて頂きましょう。


    実際の実施計画の確定段階に入り、思わぬ障害が生じました。
    A社長が「息子の会社にマンションの設計・施工を依頼したい」と言ってきたのです。せっかく「二方向採光&広い間口」のデザイナーズマンションを設計し、施工見積もりを取り始めた矢先の出来事でした。


    建築予算は設計・監理費等、消費税税込みで340百万円を想定し、全額新規融資を受ける予定を立てていました。既に債権者であるプロパー金融機関にも内定を貰っていた段階でした。


    息子さんの会社は業界大手のハウスメーカーですが、大量製作の大量販売ですから、しょせんその設計能力は、いわゆる「建売住宅レベル」並みでしかありません。

    そこで試しに息子さんの会社に見積もりを要求してみました。
    案の定、4億円を超える価格提示を受けましたので、担当営業を呼んで「そんな価格では幾らA社長の要望があっても受けられないよ。この仕事は企業再生なんだよ、分ってるんですか?」と言い渡しました。


    すると2週間で10%低い360百万円の見積書を持ってきたんです。
    もちろんまだ予算オーバーです。こちらの出方を伺ってきたんですね。
    「予算は340百万円しかないから、諦めなさい」と諭して帰しました。


    なんと翌々日に340百万円の見積書を持ってきました。
    仕様は4億円超のときのままで60百万円の値引きして340百万円にしてきたわけです。


    普通の客なら4億円を呑むんでしょうね。でもどうしても取りたい時には値引くのがどの業界でも普通にされているものですが、なんと2週間あまりで60百万円も値引いてくる、そもそもこの60百万円はなんだったんでしょうね。。。。



    不動産鑑定士である私が「適正価格の上限は340百万円である」と判断していたのに、よくもまあ400百万円の見積書を出してくるものだと思ってたんですが、向こうもこっちが騙されないことを知ると、ちゃんとした価格で出してきます。


    大手ハウスメーカーさんも不動産鑑定士を舐めてたんでしょうね。普通の認定支援機関や企業再生マネージャーさんだったら騙されちゃいますもんね。



    これが前回書いた「二つのメニュー」なんですよ。



    不動産鑑定士は建設費用についても「適正価格」を熟知しているからこそ、「正常価格」を判断する仕事ができるのですから、間違っても依頼主にぼったくりに遭わせる事はありません。

    しかし何も知らない地主さんはこの大手ハウスメーカーさんに4億円以上の建設費用を言われるままに払って建てるわけですね。


    「知らないとぼったくられる」というのは、飲食の世界に限った話ではありません。だから信頼できる専門職業家を味方につけることが必要なんです。


    当時、消費税5%での契約ができるぎりぎりの時期で、どこも配筋工や型枠工が不足していて建築計画が思うように立てられない時期に重なり、中堅建設会社がどこも前向きな見積もり回答をしてくれていない時期だったので、想定していた340百万円以下の普通の見積もりを出してくれる会社が居らず、デザイナーズマンションで建ててくれる会社が見つからなかったのも不幸でした。



    A社長のわがままが通りました。

    弊社は建売仕様の設計では競争力が劣ると判断して期待賃料を下げました。
    プロパー金融機関はリスクを乗せて金利を上げてきました。

    それがペナルティです。

    私も金利については何も言えませんでした。




    ぼったくりの話をもう少しさせて頂きます。
    これは別の大手ハウスメーカーさんでした。


    私の友人が相談に来ました。
    「父が自社敷地にマンションを建てようとしているんですが、某中堅ハウスメーカーが『明日までに契約してくれたら10百万円値引きしますから契約してくれ』と言ってきてるのですが、どうしたら良いでしょう」と。


    内訳書とプランを見て、すぐに分りました。
    「今すぐこの会社を出入り禁止にしなさい」と言いました。
    そしてどこが非常識なプランであり、価格なのかを簡単に説明するメモを渡しました。


    ハウスメーカーは「建てて儲ける」のが仕事です。そもそも営業しないと売れないものを売りつけられるのだから、「誰が儲けるのか」を良く考えないといけないのです。特に「家賃保証します」が曲者です。この話はまた別の機会にお話させて頂きましょう。


    不動産鑑定士こそが地主さんの味方なんです。
    迷ったらまず信頼できる不動産鑑定士に相談してみて下さい。

    もし思ったように相談に乗ってもらえなかったら、弊社に相談して下さいね。

    ただし場合によっては意図してらっしゃらない回答をすることもあります。
    非常識はどこの世界に行っても、やはり非常識なんですから、その点は御了承下さい。


    ==============================================

    今日の写真はタイ料理の中でも私が最高峰だと思っている「パッポンカリー」です。しかも渡り蟹のパッポンカリーは最高中の最高です。

    これが現地バンコクでは千円程度で頂けます。


    実はバンコクでは日本のラーメン店も出店しており、ラーメン一杯で千円位で売られてます。ラーメン一杯の価格でこの品質がいただけるんです。


    もちろん日本でも渡り蟹のパッポンなら2千円前後ですよね。

    東京の某店では6千円なんて法外な価格がついてましたがね(笑)


    適正価格が幾らかを知っていれば、世界中で美味しいものが適正価格で頂けるんです。すなわち「知っていること」が大切なんです。


    知らない人間はどこに行っても、何をしてもぼったくられてしまうんです。
    知らない人間は「知っている人」を頼りにすることが大切です。


    ただね、これは人間として普遍の事柄なんですが、「自分だけ得しよう」と思わないことが大切です。相手を得させるように考えてあげることが重要だと思いますよ。でないと人は離れていってしまうものです。

  • ーーー本当の企業再生への道(2)---

    「多額の債務を抱えている企業は資産活用での再生可能性が高い」

    カテゴリー:業務紹介 2014年8月17日 記事番号:936

    ここでは認定支援機関と共に甲社に対して策定した「実現可能な抜本的な経営改善計画(実抜計画)」に基づく、経営改善計画策定の内容について説明します。


    ========================

    (1)甲社の概要

    ・甲社は平成24年に50期目を迎えた首都圏の地場工務店。主に造園関連工事が主力で、近隣鉄骨アパート等の建築工事も行ってきた。
    ・年商216百万円(H24)、決算書上では常に黒字を継続。
    年商2億円強で短期借入金が116百万円(社長貸付36百万円)、長期借入金が113百万円。固定資産は特にない。
    ・ここ10年の公共事業縮小、および入札制度の変更により、徐々に収益力が低下してきている。
    ・2代目のA社長(70歳)の長男(40歳)は大手不動産会社に勤務し、工務店は継がないと明言。昨年4月、社員に廃業を宣言したため、キーマンとなる社員が次々に退職し、現在は社員4名で営業継続している。

    ・A社長は地元の名士で、相続された300坪超の土地の一部に鉄骨造三階建アパートを建て、駐車場と自宅敷地として利用していた。アパートは築20年を超えていたが、満室を維持しており、その収益を原資として会社への社長貸付が行われてきた。


    (2)甲社の財務状況の実態
    ・売上高216百万円に対して、「未成工事支出金 200百万円」を架空資産計上し、実態として借入金分がほぼ全額債務超過に陥っていた。
    ・公共工事への入札資格維持のために長期にわたってドレッシング(粉飾)が行われ、実際の累積赤字(2億円)は借入金と社長貸付で埋め合わせられていた。
    ・債権者である金融機関は乙銀行だけにほぼまとめられており、乙銀行は資産家であるA社長の個人資産の担保能力を見て、長期にわたって貸し付けに応じてきていた。



    (3)検討した対策案とその検討結果
    ①全資産売却
    自宅敷地およびアパート敷地を更地化、一括売却すれば、マンションデベロッパーに2.5億円~で売却可能。売却後の手取りは5千万円程度の見込み。
     →先代からの土地を守りたいので全部売却は抵抗が大きい。
    ②事業譲渡
    株式譲渡は引き受け手がない。
    事業譲渡で~5百万円程度の買手があった。
     →そのような低額なら細々でも自分で事業継続する。
    ③収益マンション事業への転換
    建設工事事業から収益マンション事業への転換を行う。
    →金融機関の追加融資を受けるためには緻密な計画が不可欠。弁済計画の確実性を高めるために、収益最大化できる建物の設計を行う必要がある。そのためには同一需給圏の売買・賃貸の市場分析を十分に行って最有効使用を判定すると共に、収益見込みについても地域性を十分に反映した賃料見通しを得る。


    (4)マンション設計の留意点
    ・基準建ぺい率60%限度の建築面積で200%の基準容積率を活用するための最有効使用の観点からは6階建の高層マンションと判断した。条例に基づく駐車場附置義務を回避するために、開発面積を500㎡未満に分筆し、1階部分も駐車場でなく貸室として有効活用する。
    対象地はやや駅からやや離れている(賃貸を請けている不動産屋の表示距離は徒歩10分だが、実際の道路距離は徒歩13分である)立地条件を考慮してワンルームとせず、競争力の観点から二人入居が可能で、かつ賃料が10万円以下(別途共益費)となる1DK(30㎡程度)とする。
    ・RC造6階建の高層マンション(全32戸)とする。
    ・間取り設計においては市場分析結果を反映して、二方向採光を基準とし、各戸の間口を5m以上確保するなど、競争力の高い設計とした。



    このように最適設計されたマンションによって、再生計画を立案した。

    その結果は次回に紹介します。



    =================================

    表紙の写真はかの有名なラッフルズホテルのシンガポールスリングです。

    シンガポールにあるこの有名ホテルのロングバーでは、殻付落花生が枡に入れられて出てきます。そいつを手で剥いてピーナッツを取り出して食べるんですが、殻は無造作に床に落とすのがここの流儀です。


    さて、このラッフルズホテルには実は二つのメニューが存在します。

    一つは現地の方用、そしてもう一つは観光客用です。


    前回行ったとき初めて気づきました。と言うのは、最初は現地用のメニューが出てきて注文し、勘定するときに値段が違うので確認のために見せられたのが観光客用メニューでした。

    最初に給仕したお店の方が間違えて現地用のメニューを私に出してしまったんですね。


    知らないとぼったくられるのです。

    マンションの建築費用でも実はそうした現実があるのです。

    次回はその実例を紹介いたします。






  • ーーー本当の企業再生への道(1)---

    「債務超過の社長さんへの朗報です」

    カテゴリー:業務紹介 2014年8月16日 記事番号:934

    弊社は不動産鑑定をコア技術とした「課題解決」を図ることを基本理念とした企業活動を行っています。中でも一番の課題解決の方策としてお役立ちさせていただいているのが「収益不動産事業による企業再生」です。


    ここではその実例をご紹介させて頂きます。


    =====================================


    殆どの中小企業の社長さんは会社の借金を連帯保証されています。

    本業が儲かっているときには何の問題もありません。

    しかし本業で債務超過に陥ってしまった場合にはどうなるでしょう。

    社長さんは連帯保証している会社の超過債務を自己の個人財産によって代位弁済することになるでしょう。

    金融機関は社長の抵当権設定していない個人財産まで担保価値として把握して融資に応じている場合があります。何故ならばそれが社長の要望だからです。沢山貸して欲しいと言われるので、金融機関は担保価値を社長の個人財産まで把握して融資するのです。


    それが本業不振で弁済不能に陥ったとき、

    これは不幸です。


    貸した方も悪いかもしれませんが、いずれにせよ不幸な結果となるでしょう。

    当然に本業での債務不履行の可能性が生じた場合には、連帯保証人による代位弁済が求められますので、個人として連帯保証している社長さんは「全財産を持って弁済を履行」することになります。


    繰り返します。

    金融機関は大抵は社長さんの個人財産の全てを把握されています。

    抵当権設定の有無にかかわらずです。

    そこまでの追加融資を社長さんが望まれたので、追加融資実行を担保するために金融機関はやむなく社長さんの個人財産を把握しているのです。でなければとっくに「融資引き上げ」になったことでしょう。メガバンクさんはそうしますから早いのです。


    でも中小金融機関さんは最後まで付き合ってくれます。だから債務超過が確定したときには、社長の個人財産が弁済に回ることになるのです。それは社長さんの要望でもあったのです。


    金融機関さんの担保評価は素晴らしいです。短期売却を前提にして、譲渡課税等を勘案しても幾ばくかのキャッシュが残るくらいの担保額で査定していますので、実際に破綻しても多少のキャッシュが社長さんの手許に残るのです。


    すなわち先祖代々に引き継がれた社長の個人宅の家屋、敷地を全て売却して、幾ばくかのキャッシュが残されて「終える」ことができる、ということです。


    おそらくこれは不幸です。社長さんは立ち直れないほどのショックです。

    もちろん金融機関としても不幸です。

    抵当権行使ではないにしろ、任意売却させた融資担当は寝起きが悪くなります。

    関係した方々は皆、間違いなく不幸になるでしょう。大和田常務のような強心臓でもなければ、常人には耐えられないトラウマになるでしょう。銀行員だって人の子ですから、社長の個人財産で弁済させてしまったら、心痛はひとかたならないと思います。



    もしその解決策があったら、

    きっと社長さんは生きる力を得てくれるでしょうね。

    金融機関も嬉しいでしょうね。

    それが本来の企業再生なんです。


    誰もが喜ぶ企業再生、

    そんな方法を弊社が実現しています。


    次回はその具体的な事例をご紹介させて頂きます。


    ==============================================

    最近見かけた某ハウスメーカーさんの建設現場なんですが、

    不思議な光景がありました。

    ここは北側前面道路が幅員25mの特定道路です。

    都市計画上の用途指定は近隣商業地域で、基準容積率300%の基準建蔽率80%、高さ制限は特に指定の無い地域です。

    そこになんと建蔽率6階建のマンションが建設されています。

    駅から徒歩1分で北側特定道路に面した高さ制限の無い好立地の土地に、ベタのマンションを建てているのです。


    やはり土地の有効活用を検討される際には不動産鑑定士に相談された方がいいと思います。地主さんの一番の味方は不動産鑑定士なんですよ。





  • 不動産鑑定士の役割について(1)

    カテゴリー:業務紹介 2014年7月31日 記事番号:931

    全く知らない人に不動産鑑定士という資格を説明するのは難しいものです。

    例えば収益不動産を持たれている人や、大きな土地を相続された方などは、不動産鑑定士を御存じなくても、ちょっと説明すれば理解して頂けるのですが、普通の人に対して説明するのは難しいものです。


    そこで今回は具体事例を交えて不動産鑑定士の役割を御説明したいと思います。


     ※先に注意しますが、いわゆる法的役割や公的役割ではなくて、

      もっと身近な事象に対する役割を説明するものです。


    先日、私の友人からこんな御相談を受けました。

     ・父親が自身で経営している焼肉屋さんを売りたいと言っている。

     ・買った時のローンが残っているので、残金以上の金額で売りたい。

     ・不動産屋さんに売りに出して貰ったけど全然売れなくて困っている。

     ・どうしたらいいでしょうか。


    詳しく聞きますと、こんな内容でした。

     ・千葉県の某市の国道沿いの店舗で土地は200坪くらいある。

     ・駐車場は10台くらいしか入らない。席数は60席くらい入る。

     ・建物は築40年の木造二階建。一階は店舗、二階は二世帯住宅。

     ・最寄り駅から5kmほどの距離があり、アクセスは自家用車かバス。

     ・国道は車通りが多く、隣の市には大規模な公務員研修所があって

      送迎バスを出せばかなりの集客が見込める。


    そこで不動産鑑定士は考えます。

    何を考えるかと言うと「最有効使用」を考えるんです。


    すなわち、「対象不動産が最大の効用を得られ使用方法は何か」を考えるのが不動産鑑定士の一番の使命であり、期待される役割なんです。

    ここで重要なのは「最大の効用」を享受するのは「対象不動産の所有者」です。売買を前提とした場合は「買った人の効用」であり、「売る人が考える効用」ではないと言う事なんです。つまり、「私はこの不動産にはコレだけの価値があると思うんだけど」と幾ら売手が考えても、買手がその効用を認めなければ意味が無いのです。


    そして更に重要なのは「典型的な需要者」を判断することです。

    誰が買うかで用途が変わります。

    誰が買うかで価格が変わります。


    ここを間違えると鑑定評価自体が意味の無い机上の空論になるわけです。そのために不動産鑑定士は、対象不動産が存する地域の市場分析を行い、対象不動産の個別性を十分に把握した上で市場における対象不動産の競争力の程度を判定し、その競争力に応じた価値判断を市場に成り代わって行うのです。それが鑑定評価なのです。


    では具体的な事例に沿って説明いたしましょう。


    今回の対象不動産は木造二階建店舗・住宅およびその敷地です。

    そのため最有効使用の判定に当たっては三通りの観点から考える必要があります。すなわち①現況のまま使用を継続する場合、②用途を変更し、必要に応じて改造を行った上で現行建物使用を継続する場合、③建物を取り壊して更地にする場合、の三通りです。

    最有効使用の判定は、「対象不動産の効用を最大限に発揮できる使用法」の判定であり、それは言い換えれば「対象不動産使用に対して一番高い経済価値を認めることが出来る使用方法」であり、つまりは「一番高い価格で買う人が想定する用途」ということであり、「典型的な需要家が買ってもいいと思う価格」なのです。


    まず簡単な方から考えましょう。


    (1)建物を取り壊して更地とする場合。

    焼肉屋としての設備を廃棄し、二世帯住宅の居住設備も全て廃棄し、更地としての新たな利用を前提としたものになります。新たにコンビニを建てたり、アパートや戸建分譲だって構いません。

    しかしそうした場合は対象不動産の個別性は土地のみになりますので、近隣周辺地域の更地が全て代替競争不動産になるわけです。そうなれば客観的に近隣周辺地域の更地取引価格の範囲内でしか価値判断されないことになるわけです。


    更地の場合の典型的な需要者は、国道沿いの店舗用地を需要する事業者だと考えられます。なぜなら戸建住宅なら国道沿いが必要ないので、一本中に入った土地でもっと安く手に入れたいと思うものです。国道沿いの土地を需要するのは、国道を走る車の客を誘引しようとする店舗事業者です。

    そうした需要者は国道沿いに広く検討しますので、代替競争不動産は国道沿いの更地となります。


    この辺りは国道沿いの角地の店舗適地が近々に取引されており、取引価格は34,000円/坪ほどでした。住宅地では更に低い20,000円/坪台の価額でしたので、対象不動産土地の地域性や個別性を加味して、更地価格を50,000円/坪と査定しました。

    土地面積は200坪ほどでしたので、更地価格は1,000万円ほどと査定されました。実際の売値は現行建物の解体費用が掛かりますので、この取引価格から解体費用を控除した価額が査定価格になります。



    (2)現行建物の継続使用する場合
    この場合の需要者は焼肉屋を居抜きで使用して、焼肉屋を継続して営業したいと考える事業者です。でも事業者と言っても色々考えられます。ここは対象不動産建物の個別性を前提として、もう少し具体的に考えましょう。


    対象不動産は築40年の木造建物です。

    現在の建築基準法の耐震基準が出来たのが32年前ですので、いわゆる旧耐震基準建物です。大地震が来た時の崩壊に耐えられるかどうか不明瞭です。大手焼肉チェーンはそうした地震リスクのある建物は使いません。しかも駐車場が10台ほどしか入らない敷地面積では集客力が小さいために、魅力が低いと判断しますので、大手チェーンは需要家になりえません。


    では誰が需要家になるでしょうか。

    考えられるのは個人事業主として、初めて焼肉店主として独立開業をもくろむ若手事業者です。彼らは自己資金が豊富では有りませんが政策金融公庫から創業融資を受けることができますので、開業費用として自己資金+融資を受けて3,000万円程度の創業資金を前提として事業計画を立て、開業のための取得店舗を需要します。

    この創業事業者は初期費用を最小化する必要があるので、居抜き物件の活用を考えるのであって、創業資金で入手可能で、最小人数で稼動できる範囲での設備・規模の物件を需要します。


    次にそうした事業者が幾らまで出せるかを考えます。

    当該事業者として想定されるのは、焼肉チェーン店等の店長であり、現在の年収(給与収入)は、現在の飲食業界の給与水準から考えれば400万円~500万円程度と推察されます。この給与年収から住居費を支払っているわけですから、住居付店舗ならばその分が少なくても対応できると推察されます。


    まず対象不動産で期待される収益を査定します。

    仮定する条件は以下の通り。

     

     ・売上げは週末3日間を主と考え、平日は収益向上努力マージンとする。

     ・駐車台数10台で平均3人×単価3,000円で2.0回転/日とする。

     ・週末を4週/月、店主給与を除く原価率を70%とする。


    月間売上 3,000円/人×3人/台×10台×2回転×3日/週×4週/月=2,160,000円

    月間収益 2,160,000円×(1-70%)=648,000円

    年間収益 648,000円×12ヶ月=7,776,000円


    この年間収益から600万円は弁済に回すことができると考えられるため、5年で完済できる計画を前提として、3,000万円の創業資金で賄うことができると考えられます。


    では3,000万円の創業資金で幾らまでの店舗付住居を買うことができるでしょう。対象不動産の現況を考えれば、創業時に必要な費用を以下のように見込みます。

      運転資金   500万円

      内外装修繕、設備費 1,000万円


    特に外壁塗装と広告塔の改修は不可欠であり、競争力を維持するための設備改修も考えれば1,000万円程度の費用を見込むべきです。だとすれば対象不動産に出せる金額は以下のようになります。


      3,000万円-(500万円+1,000万円)=1,500万円


    更地価格よりも高い金額が付くのは需要者が異なるからです。

    居抜きで需要する人が高い効用を認めることが出来るから、購入額も高い金額を付けることが出来るわけです。


    (3)用途変更を前提とする場合

    用途変更で最も期待できるのはラーメン屋です。

    国道沿いで通行量の多い立地ですのでラーメン店は繁盛するでしょう。

    しかし致命的な問題として駐車場が狭すぎると言う点があります。

    しかもラーメンの需要者は一人で来店し、単価は800円程度です。

    時間回転数は多いですが、車での来店を前提とする限り、200坪では採算が合いません。


    簡単に試算してみましょう。

    ・一日に駐車場10台分が5回転する。

    ・一人で来客、単価は800円。

    ・月30日営業し、年間360日稼動とする。

    ・店主給与を除く原価率を60%とする。


    月間売上 800円/人×1人/台×10台×5回転×30日/月=1,200,000円

    月間収益 1,200,000円×(1-60%)=480,000円

    年間収益 480,000円×12ヶ月=5,760,000円


    これでは年間に400万円程度しか弁済できませんので、5年間で2,000万円までしか創業資金を手当てできないことになりますので、改装費用を考えれば対象不動産を居抜きで購入して改装して使用する場合、改造費用を居ぬきの場合と同様としても


      2,000万円-(500万円+1,000万円)=500万円


    となって、用途変更の場合の購入額は用途継続の場合より低くなってしまいます。


    なおコンビニは用途変更では震災リスクの問題で不可能であり、他の用途はこの地域では困難です。


    =====================================


    以上の検討の結果、対象不動産の典型的需要者は「独立開業して焼肉店舗を経営しようと目論む若手事業者」であり、最有効使用は「現行店舗の継続使用」だと判断されました。

    そしてその場合の価格は1,500万円であり、これが対象不動産の公売価格の上限であると言うのが結論となるのです。



    このように不動産鑑定士の役割は、対象不動産の最有効使用の用途および典型的需要者を市場分析により明らかにし、その競争力の優劣を加味した収益力等を総合的に判定し、対象不動産の正常価格を求める役割を担うのです。




    焼肉屋さんの話題なので、手持ちの焼肉の写真を載せて見ました。

    トップ写真はもちろん「ねぎタン」からですよね。

    そしてメインは「ざぶとんカルビ」

    不思議なものでカルビって絶対に沢山は食べれないんですよね。

    一番いっぱい食べれるのが赤身です。しかも塊で丁寧に炭火でじっくり焼いてから、切り分けて食べれば一番沢山食べれるのです。


    焼肉屋さんも売り物を考えると、原価率を適切に維持してお客様に満足してもらえる品揃えが出来るのです。カルビばっかり食べさせたのではすぐに飽きられてしまい、お店に対する印象も悪くなります。


    よく考えて店舗経営すること、

    でも不動産の選び方も経営計画もなかなか分りませんよね。

    そういう時に総合的に相談に乗れるのが不動産活用のプロである不動産鑑定士なんですよ。




  • 不動産鑑定業者と不動産業者との違いについて

    カテゴリー:業務紹介 2013年7月19日 記事番号:924

    不動産業に携わる資格として最も有名なのが「宅地建物取引主任者」です。
    いわゆる「不動産屋さん」の資格ですね。
    不動産鑑定士を御存じない方の多くは、初対面で名刺交換等をした時、「不動産○○」という言葉を見て「不動産屋さんですね」とおっしゃいます。以前はついついそう言われる方に対して「不動産鑑定士とは何か」を一生懸命説明したものですが、最近はやめました。と言いいますのも、不動産鑑定士を御存じない方は、直接我々の専門職業能力がお役に立つことが滅多に無いということが判って来ましたので。

    もちろん弊社は不動産業免許を取得して、不動産業者として営業もしておりますので、「不動産屋さんなんですね」と言われてもまぁ良いか、と思うようになったと言う点もあります。多くの不動産鑑定士は一次試験で行政法規の科目を勉強してますので、鑑定士受験中に宅建主任者も取ってしまっています。だから不動産業の免許を取っているかどうかは別にして、大部分の不動産鑑定士が宅建主任者資格も持っているのが実態ですからね。

    最近、とあるお客様の収益マンションの設計に関わることになり、最有効使用としての間取りや階数について検討を進めています。お客様はこれまで二棟のアパートを建てて安定収益を上げてこられており、息子さんは中堅不動産会社に勤務する不動産業の方です。

    お客様は「御近所の方々に配慮してできるだけ低層の設計にしたい」とおっしゃる。
    息子さんは「免震構造採用して安心を売りにすべき、間取りもワンルームからファミリータイプまでバリエーションを色々取り込んでいきたい」とおっしゃる。

    気持ちはわかりますよ、おっしゃることはごもっともです。
    でも不動産鑑定士は最有効使用を、対象不動産に係る市場を実証的に分析することで判断する専門職業家です。最有効使用とは「最大の収益が上げられる使用方法(設計)」なんです。

    (1)低層化したいという意見について
     もし私がハウスメーカー営業マンだったら「お客様の要望なんだから」とそれを採用するでしょうね。だってお客様の意向に沿わなければ「他のハウスメーカーを当たるよ」と言われてしまいますからね。
     でも私は不動産鑑定士です。
     次の点で低層化は受け入れられません。
     
     まず第一に、周囲の隣地は斜線制限を受けない10m以下の建物が敷地いっぱいに建ち並んでおり、建築面積が大きくなって隣地との離隔距離が小さくなり、日照通風が悪くなります。特に1階住戸は致命的で、近所の低層マンションの賃料は低位に抑制されてしまっています。
     すなわち低層マンションでは収益力向上が望めないのです。

     第二に周囲が三階建以下のマンションですから、高層化すると目立つのです。当然日当たりも抜群で、この地域では高層マンションは絶対に競争力が高くなるのです。何と言ってもこの地域には5階建て以上が1軒もない。だから勝てるのです。競争力の高い不動産は当然に空室率の点でも賃料の点でも優位です。すなわち最有効使用は「低層マンション」ではなくて「高層マンション」なんです。





    (2)免震構造とタイプのバリエーション
     東日本大震災後、東京都心のオフィスビルでは二極化が現れました。
     事業継続計画(Business continuity planning、BCP)の観点から、耐震性の低いビルから、免震構造等を採用した耐震性の高いオフィスビルに移転する動きが顕在化し、賃料や空室等の点で二極化が生じているのです。
     またタワー型の分譲マンションでも、免震構造を採用していないと売れ行きが鈍いなどの明らかな市場参加者による選別が行われています。免震構造のない超高層マンションは長期周期の地震に見舞われて、長時間に渡って横揺れが続いたと聞いてます。

     しかし中低層の賃貸マンションではどうでしょう。
     そもそも中低層でどれだけ揺れるというのでしょうか。
     阪神大震災のときに小職は神戸で被災しましたが、当時は未だ旧耐震基準の中高層ビルが補強もされずに残っていて、少なくない数のビルやマンションが直下型の震度7という巨大地震によって破壊されました。しかしこれは「免震構造」以前の問題で、建物の構造設計と施工強度がそもそも低い建物が壊れたというだけのものなのです。

     賃貸の中低層マンションで免震構造を採用すると言うことにどれだけの市場参加者、すなわち賃借人が「その価値」を認めて、高い賃料を支払ってくれるのか、その実証データが見たいものです。

     またファミリータイプを入れると言う主張については、「賃料単価は賃貸面積に反比例する」という当たり前の判断基準を無視しています。そもそもこの地域にはファミリータイプのUR住宅が豊富に存在しており、URの設備や賃料に勝つのは困難です。

     不動産鑑定士は市場分析に基づいた実証データによって、鑑定評価書の中で最有効使用を判断していくのです。
     決して直感で決めるものではないのです。

     不動産業者と不動産鑑定業者の一番の違いは、不動産の価格を納得して貰う人数の差で説明するとわかりやすいです。

     不動産業者は「たった一人」がその価格に納得すれば「勝ち」なんです。
     その価格で買ってくれる人、売ってくれる人、が一人居れば良いのです。

     これに対して、不動産鑑定士の決定した価格は「万人が納得する価格」と言うのが原則です。両者の端的な違いはこの点なんです。だから我々は徹底的な市場分析を行い実証的なデータ収集を行うのです。

     免震構造や間取りのバリエーション、これらはマンションオーナーに対して説得できれば「勝ち」になりますよね。でも不動産鑑定士は「市場に対する競争力を判断」するのが仕事ですから、オーナーだけを説得すればよいと言うものではないのです。

     これからお客様に納得して貰えるように不動産鑑定評価書を通じて説明していくことになりますが、最後はわかって貰えると思います。説得力こそが専門職業家としての最も重要な資質ですからね。

    ============================================

    さて、何ゆえに鰻丼の写真とお品書きの写真を出してきたのかを説明させて頂きますね。



    一番最初にお見せしたのはうな丼です。
    お品書きにあるように、うな丼は2550円ですが、うな重は松でも1850円です。
    普通、うな丼とうな重はどっちが高いでしょうかね?

    ○○丼は庶民のファストフードですから安いのが当然。
    ○○重は畏まった席で頂くものですから、多少高くても良いって思いますよね。

    でも違いますね、うな丼のほうが高い。

    なぜでしょう?






    実はこちらのお店ではうな丼は二重になってるんですね。
    ご飯の中に蒲焼がもう一匹仕込まれてるんですよ。

    理由がわかれば簡単、納得ですね。

    ちょっと見た目ではわかりませんが、
    ちゃんと調べて理由を明示すれば誰もが納得してくれるんです。
    理由を示して万人に納得して貰うのが不動産鑑定士、

    ってことでお後がよろしいようで。
  • 家賃で困っている人は誰?

    カテゴリー:業務紹介 2013年3月3日 記事番号:917

    ※写真はシンガポールのとあるビルの影で偶然見かけて撮影したものです。

     カラスなんですよ。 カラスが縄張り争いしてるんです。凄い勢いで羽ばたきながら、侵入者の追い出しをするんですね~。まさに鳥獣戯画のような一瞬を撮影することが出来ました。

     家賃交渉は縄張り争いではありませんが、意外に難しい問題のようです。

     

     

    裁判所の判例を見ていると「賃借人からの家賃値下げ交渉」に係る事件が多く見られます。

     

    このため「家賃に係る問題の多くは賃借人からの家賃値下げ交渉が多いのかな」と思ってました。しかし実態は少々違うようですね。

     

    住居用途や事務所用途のテナント入居者の方は、比較的身軽に引っ越しが出来ますので、「安くて良い所」があればすぐに移ってしまいます。このため、市場賃料(新規の賃貸借契約において成立する賃料)に近い額で契約更新される場合が多いようです。

    家賃交渉も何もない、入居者は周辺の募集賃料を見て「こっちの方が新しくて広くて安いじゃない」と思ったらさっさと移ってしまいますので、家主は大変です。同品質で市場賃料より高い家賃の部屋は借手がつかずに空室になりますので、仕方なく家賃値下げして募集を掛けなくてはならなくなりますからね。

    自然と家賃は市場相場に収斂(しゅうれん)していくことになるのです。

     

    これは入居者が「部屋を変えるためにお金がさほどかからないから」です。

    すなわち 賃料差額>転居費用 なら転居されてしまうのです。

     

      賃料差額=(市場賃料-契約賃料) × 契約期間

      転居費用=引越代金+転居案内費用+造作設置費用+原状回復費用

     

     引越代金   :引越代金+礼金等+仲介費用

     転居案内費用:連絡葉書+従来顧客への案内や新店舗周辺への宣伝広告

      

     造作設置費用:新店舗の造作設置費用

     原状回復費用:旧店舗造作等の撤去費用

     

    しかし、特に飲食店舗や診療所等の用途でテナント入居されている事業者の方は、このうちの造作、設備の費用を掛けないと営業が出来ないので、お店を変える度に造作のやり直し費用が発生してしまいます。

     

    また「店にお客がつく」のであり、その地域にそのお店が存在するから、そのお店にお客様が通ってくるものであり、店の都合で場所を変えれば、お客様への連絡や新店舗周辺での顧客新規獲得に費用が掛かってしまうことになります。

     

    こうしたことから、なかなか「賃料差額>転居費用」にならないため、居住用途や事務所用途に比べると転居が難しいのが実情だと考えられます。

     

    昨今の不動産市場の低迷により、賃料は下落を続けています。このため、殆どの不動産で市場賃料に比べて、自分が契約している不動産の賃料が高い、という傾向が生じています。

    一方、長期のデフレ基調によって、店舗経営社の事業収入が減少し、総収入に占める賃料の比率が相対的に高まっている傾向がみられます。

     

    こうしたことから、店舗経営者の方にとって賃料値下げ要求は至極当たり前のことのように思われます。

     

     借地借家法第三十二条では「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」とされてます。

     

     すなわち以下の三要件のいずれかの理由によって 契約賃料が不相応になった場合には、借地借家法に定められた借賃増減請求権によって、賃貸人または賃借人のいずれか一方から賃料増減額の請求ができるのです。

     

     ①公租公課等の負担の変動

     ②経済事情の変動

     ③市場賃料の変動

     

     本来は値下げ時は賃借人(店子)が、値上げ時には賃貸人(大家)がこれらの三要件について数字を調査して、相手方に根拠として示して値下げまたは値上げを認めて貰うのが筋となります。この交渉がまとまらなければ「民事調停法第24条の2(後述)」の定めによって調停を経て裁判を行うことになります。

     

     しかし実際にはそうした手順に及ぶことなく、大部分が店子である店舗経営者のネゴによって値下げが行われているようです。しかもその大部分はいわゆる「泣き」と呼ばれる手法です。

     

     具体的な「泣き」の交渉は「客足が落ちているので売り上げが減っている」とか、「不況で財布のひもが固くなっている」とか、上記の②の理由を説明して賃貸人(大家さん)に値下げをお願いするものです。もっと直接的に「とにかく売り上げがこれしかないから家賃が払えない」というような、文字通り「泣きを入れる」場合もあるようです。

     

     いずれにしろそうしたネゴによって賃料値下げを認めて貰えるケースが少なくないようです。

     

     

     でもそうなって困るのは誰でしょう。

     実際のところ不動産市場の低迷で最も困っているのは賃貸人(大家さん)であるというケースが少なくないように見受けられます。と言うのも、そもそも市場賃料が下がったからと言って、市場賃料水準まで賃料を下げるのは賃貸人の利益を一方的に損なうものであり、利益衡量の精神に反して本来は不当なのです。

     

     しかもこうしたネゴが行われた場合、賃借人である店舗経営者の方は、市場賃料よりも低い額でのお願いをする傾向にあるようです。大家さんも大部分は人が良い方が多いので「経営が困っているなら仕方ない」と値下げ交渉の値下げ幅について賃借人の方の希望を聞いてしまって、市場賃料水準や市場賃料水準以下の水準まで値下げを容認してしまうケースがあるようです。

     

     もちろん「家賃が払えねえならとっとと出て行きな」と頑なに値下げのお願いを拒絶する大家さんも実際にはいらっしゃいます。そうした大家さんの言い分は「一度約束した(契約)賃料なんだからウダウダ言うんじゃない」というようなものだと思われます。

     そうした大家さんの店舗不動産を借りてしまった経営者の方は、その不動産の存する地域の就労人口減や不況による交際費減等の外部要因によって売り上げが落ちて経営が困難になっているにもかかわらず、「そんなことは知ったこっちゃない」という大家さんの頑なな態度になす術無く、最終的にタダ同然で造作を泣く泣く手放して出て行くということになってしまう場合もあります。

     

     

     賃料の増減額交渉は賃貸人・賃借人の相互に言い分があるはずです。

     そして一番大事なことは「適正な水準はどこにあるのか」という点を見極める必要があるという事だと思います。

     

     賃料改定交渉で揉めれば、最終的には調停、裁判となるものですが、その場合に裁判所が裁定するために参照するのが不動産鑑定士による賃料の鑑定評価額です。

     

     ですから最初から不動産鑑定評価による「適正な賃料額」を相互に知ることが出来れば、不当な賃料値下げを回避することもできますし、「頑なに賃料値下げを拒絶する大家さん」に対して説得する有力な材料になるというものです。

     

     

     

     賃料で悩んでらっしゃる方がまず相談すべきは不動産鑑定士なのです。

     まず適正賃料を知ることが重要なのです。

     それは賃料値下げを求めたい方も、値下げを求められてしまった方にも重要なことなのです。利益衡量の精神、すなわち契約関係にある当事者同士は、一方がすべての利益や不利益を負うというのは不当であり、相互に応分の負担をしあうのが民法が定める本来の精神なのです。

     

    そのためには不動産鑑定という手段を活用するのが最も適切です。

     

    まずはお気軽にご相談ください。

     

     

     

     

     

    第二十四条の二  借地借家法 (平成三年法律第九十号)第十一条 の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第三十二条 の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。

     

     

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