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市場分析の記事一覧

  • 中古建物の価格

    カテゴリー:市場分析 2023年1月26日 記事番号:962

    不動産の無料相談の際に、しばしば受けるのが「戸建住宅を売る時に建物の価格がずいぶん安く査定されてしまうのですが何とかならないでしょうか」という切実なご相談です。

    不動産屋さんに売却価格の相談をすると、大抵かなり安い金額で提示されてしまいがちです。特に建売住宅を購入した方が哀しい査定を言われてしまうようです。すなわち、買った時は建物価格に1800万円も出したのに、10年経ったら500万円、15年経ったら殆どゼロでしか査定して貰えないというような内容です。

    不動産屋さんは意地悪で言ってるのでもないし、「安く買い叩いてやろう」などという下心でそんな価格を提示しているのではありません。実際、市場で売却しようとしたら「そんな価格」でしか売れない現実を知っているから、そのままお客様に説明しているだけなのです。

    不動産鑑定士として相談を受けていると、土地価格だけでなく建物価格についても鑑定評価を行う事があります。

    まず小職が評価した戸建住宅の建物価格の経時変化の実際のデータを下記に示します。

    鎌倉の事例は七里ガ浜を中心とした住宅地における戸建売却事例に基づくものであり、逗子・葉山の事例は逗子駅から高台に上った住宅地域における戸建売却事例に基づくものです。いずれも人気の地域ですので、中古住宅として多くの販売事例があります。

    なお、売却事例を収集する際に留意した点があります。
    それは「全て注文住宅で建てられた住宅である」という点です。
    皆さんもご存知の通り、注文住宅は建売住宅に比べて造りがしっかりしており、それなりの建築費用が掛かります。単純に言って建売住宅なら坪40-50万円で建てられているところを、注文住宅の場合は坪60万円以上の費用が掛かっているという違いがあります。




    図でお分かり頂ける通り、注文住宅でさえも10年で半値以下になり、15年から20年で価値ゼロになってしまっている実態があるわけです。

    ただし例外があります。
    それは主に水回り設備を最新の設備に入れ替えてしまうと、市場価値がぐっとあげてしまうことが出来るというものです。マンション等では良く見られる「リノベーション」と呼ばれる更新工事ですが、これを戸建住宅にも施すことで売却価格を上げることが出来るわけです。

    不動産業者の方々はこの市場実態を良く御存じですので、戸建住宅の「買取再販」案件として、こうしたリノベーション工事を施して、利益を出せる価格で売却する業者さんも多くいらっしゃいます。すなわち、上記の掲示低下曲線から上位に持ち上げられた価格帯から工事費用を控除したものが買取再販の利益として得ることが出来るわけですから。

    もちろんリノベーションによる価値回復度合いが低ければ(すなわち工事費用を抑制すれば)、それほど売却価格は上げられませんし、築20年を超えると、水回りを変えたからと言って高い価格を出してくれるお客様もいらっしゃらない現状がありますので、築年は重要です。

    なお、建物は防水性能を維持していることが必要なので、概ね15年毎以内に外壁塗装や屋根の修繕等(長期修繕工事)を行う必要があります。それをしなければ「朽廃」状態になってしまうので、長く住むためには最低限、長期修繕工事を定期的に行ってゆく必要があります。

    せっかくですから不動産鑑定士が建物価格を鑑定評価するケースを御紹介させて頂きます。主には以下の3点です。

    ①離婚による財産分与時の時価評価
    ②相続における建物価格の時価評価
    ③建物譲渡における消費税等の税金低減のための時価評価

    一般的に建物価格と言えば、固定資産税の課税評価基準額として、毎年4月に納税通知書で送付されてくる価格が、一般の方々には馴染みがあると思います。新築時の建物価格は概ね市場価格の半額水準ですが、毎年減価償却して行き、耐用年数(木造戸建住宅なら20年)まで定額償却していき、耐用年数を超えると新築価格の20%で据え置きになります。
    これは徴税のための便宜上の計算式です。

    市場において対象不動産建物が幾らで評価されているのかは、不動産鑑定評価によってしか明示できない(少なくとも国税や裁判所には)ので、建物の時価を把握しようとすれば不動産鑑定士に依頼する必要があります。

    ここで気を付けなければならないのが評価法です。
    単純な「耐用年数法」と呼ばれる、税務上の評価法と同じ手法はダメです。判例として例えば下記のように否認されています。
    ----------------------------------------------------------
     評価通達に定める評価方法は、一般的に合理性を有するものと解されるところ、当該定めを適用して評価することが著しく不適当と認められる特別な事情が存する場合、すなわち、評価通達により算定される建物の評価額が客観的交換価値を上回る場合には、他の合理的な評価方法により時価を求めるべきものと解されている。この場合の評価通達により算定される建物の評価額が客観的交換価値を上回っているといえるためには、これを下回る不動産鑑定評価が存在し、その鑑定評価が一応公正妥当な鑑定理論に従っているというのみでは足りず、同一の建物について他の不動産鑑定評価があればそれとの比較において、また、近隣における取引事例等の諸事情に照らして、評価通達により算定された建物の評価額が客観的交換価値を上回ることが明らかであると認められることを要するものと解されている。
    (平20. 5.21 沖裁(諸)平19-5)
    ----------------------------------------------------------
    このために小職は上図に示すように、実際に取引されている戸建売買価格から配分法と言う手法を適用して、「建物の価格」を抽出して求めているのです。配分法を適用している限り、国税から否認されることはありませんので。

  • 冠水リスクの評価について

    カテゴリー:市場分析 2019年10月14日 記事番号:956

    不動産鑑定では、ハザードマップに基づく危険度合いだけではなく、実際の河川氾濫履歴や集中豪雨時の冠水履歴等を調査して、少なくとも「冠水のリスクがある」ことを指摘する。
    価格に反映させるかどうかは、確かに500年に一度の大豪雨という前提条件では、鎌倉や逗子などの太平洋側都市の津波被害を価格に反映させない(※)のと同じ理由で「市場参加者が発生リスクを価格に織り込んでいるかどうか」で判断することになる。
     
    ※2011年の東日本大震災後に鎌倉や逗子、金沢八景まで海岸沿いの宅地が価格低下したが、すぐに元の水準に戻ったことが記憶に新しい。
     
    今回の溝ノ口の冠水事例では、多摩川に流入する平瀬川が「多摩川水位上昇によって平瀬川の水が多摩川に流入できなくなった」ことが原因であると推察されている。

    どういうことかと言えば、

    国土地理院では全国の地図を管理し、公開している。
    WEB上で断面図まで取得することができる。
    今回の冠水が生じた地点の断面図をみてみたところ、やはりそういうことであった。



    図の北側に平瀬川があり、「+」マークの地点が冠水したマンションである。マンションの南側にはテレビクルーたちが待機していた土手がある。断面図は平瀬川の中央から土手までを調べた結果を示している。

    始点の平瀬川中央は「川底」の標高が11.0mである。
    平瀬川の堤防は13mまで積まれていた。
    堤防を越えた地域にマンションがあるが、その地域の標高は最下部のマンション敷地分で10.8mであった。すなわり平瀬川の川底より低い標高にある。
    もし、平瀬川の水が堤防を越えて氾濫すれば、当然にこの最も標高の低い地域に氾濫水が流入し、冠水状態になる。


    では平瀬川がどうして氾濫したか。


    当時は多摩川が氾濫寸前まで水位が上昇していた。

    多摩川の土手の標高と平瀬川の土手の標高のどちらが高いか、そこが問題となる。そこで多摩川を始点として対象地まで断面図を引いてみた。するとやはり予想通りの状況になっていることが判る。




    始点は多摩川の河川敷の位置を取った。多摩川の一番深い部分(通常、水が流れている地点)は標高7.0m程度である。河川敷はそれより3mほど高い位置になるので、通常の雨では河川敷が冠水することはない。

    しかし今回の豪雨で多摩川の堤防の際まで水位が上がっていた。堤防の高さは図に示すように16.4mである。ここまで水位が上ったら「多摩川が氾濫」ということになったであろう。堤防の手前で一段土盛りがあり、この高さが13m程度になっている。この土盛りで通常は水が止められる。堤防は最後の砦である。


    今回の豪雨の際には堤防まで水が来ていた。つまり土盛りまで冠水していたので、その時の水位は13mを超えていた。これに対して、多摩川に流入する平瀬川の堤防は13m高に過ぎない。多摩川の堤防まで水が来たら、堤防高の低い支流である平瀬川が先に溢れるのは当然である。

    平瀬川の堤防高は標高13mに過ぎない。つまり多摩川の水が堤防に達するまで水位が上がれば、平瀬川の堤防高を超えることになる。多摩川の堤防高は16m以上あるので多摩川の水は溢れないが、多摩川に流入する支流が先に溢れるのである。


    こうした事象は考えていれば当たり前である。

    治水に関する土木計画で、本流の堤防高を嵩上げしたら、支流の堤防も同じだけ嵩上げしなければ意味がないのである。


    今回の豪雨において、地方では堤防決壊が生じたが、首都圏では幸いな事に堤防決壊までは生じなかった。しかし溝ノ口周辺および対岸の二子玉川地区での冠水は、このような支流があふれることで生じた可能性が高いと推察される。


    不動産鑑定評価ではおそらくこの地域の価格を減価することはないだろうと思われる。不動産鑑定評価は「市場参加者の視点」を一番に重視するので、おそらく1-2年も経てば忘れられてしまうような冠水事象は価格形成要因にはならない。

    しかし専門職業家は「リスクを指摘すること」を求められる職業である。このため、常に河川の氾濫リスクについては、ハザードマップだけではなく、このような標高によるピンポイントのリスク指摘まで行うことが求められていると考える。





  • 買ったマンションが値上がりするって本当?

    カテゴリー:市場分析 2014年8月5日 記事番号:932

     東京カンテイさんがびっくりするような記事をアップされてました。
    「駅別のマンションPBR、表参道駅がトップ」
    http://www.kantei.ne.jp/release/PDFs/80PBR_shuto.pdf
    ...
    PBR(price book-value ratio)は株価純資産倍率で、株価を一株当りの純資産額で除した数値ですが、東京カンテイさんは

      マンションPBR=中古価格/新築価格

    という表記で現して、東京カンテイさんは「新築で買ったマンションが中古市場で何倍の価格で取引されているかを表す数値」だと言ってます。

    ビックリですよ。
    東京カンテイさんは、いったい何を考えてこんな馬鹿げたことを言っているのでしょうか。

    論より証拠です。

    早速、マンションの取引価格の推移を調べてみましょう。
    調査対象には、「一番値上がり」していると言っている表参道駅近マンションと、「一番値下がり」していると言っている京成大和田駅周辺マンションを見てみましょうね。




    まず、表参道駅近マンションです。
    1982年築から2006年築までの5つのマンションを
    ピックアップしました。選定に当たっては各年代にわたって5事例以上の成約事例のあるものを選んでいます。

    この図を見ていただいて何が見えますか?

    30%以上の「値上がり」が見えますか?

    見えないですよね。むしろ右肩下がりです。

    買ったマンションが大幅に値上がりするなんて、今の時代はありえないんですよ。土地価格が何倍にもなったバブル期にはそうした事例はありましたが、土地神話の終わった今の時代には数倍も土地があがることは無いのです。

    では次に50%も値下がりしたと言う京成大和田駅周辺のマンション価格の推移を見てみましょう。




     千葉県のこの地域は、バブル崩壊後に住宅地の地価が1/10に下落した地域です。なので当然にマンションも急低下しており、1992年から2002年までの10年間で140万円/坪から40万円/坪へと急激に下がってます。その後も右肩下がりの傾向が続いています。

    もし新築で坪110万円以上で売り出されていたなら、築10年のマンションが坪60万円前後で取引されているので、確かに50%も下がっているんでしょうね。でも赤マークの2005年9月築のマンションを見ると、ダラダラ下がっているのではなく、むしろ下げ止まっているようにも見えます。

    (1)マンション価格は何で決まるか。
    そもそもマンションの価格は何で決まるんでしょうね。
    通常、マンション価格は以下の価格で現されます。

    マンション価格=専有部分の所有権価格+敷地の区分所有権価格

    専有部分価格は建築費等が100万円/坪程度が初期値で、その後は経年劣化(減価償却)によって、最低でも年2%の減価を生じます。10年経てば20%の減価は当然です。

    では敷地の区分所有権価格はどうでしょう。
    当然に地価上昇で値上がりし、地価下落で値下がりします。

    実はマンションは土地単体と違って、土地価格と建物価格の和ですので、その効き方が地価水準によって異なるのです。

    (2)表参道のマンション価格の内訳
    表参道は容積率500%の地域で、地価は2,000万円/坪なんて言う高地価地域です。マンションの敷地区分所有権はおよそ容積率100%当りの価格(一種単価)に近似されますので、敷地区分所有権価格はおよそ400万円/坪(=2,000万円/500%)です。

    例えば直近10年で地価が10%上昇していたとすれば、表参道の高級マンションですから建物も上質で当初は130万円/坪もかかっていたでしょうから、

     10年前の新規価格=130万円(建物)+400万円(土地)=530万円/坪
     現在の中古価格=100万円(建物)+440万円(土地)=540万円/坪

    というように地価上昇によってマンション価格が若干値上がりすることがありえます。でも、30%も上がるには、建物価格の低下を上回る急激な土地価格の上昇が必要です。だから今ではそこまではないということなんです。せいぜい横ばいか若干の上昇程度。

    図に示されているように、右肩下がりの基調はまさにそれを現しているのであり、決して「持ってるだけで新築より値上がりする」なんてバブルのようなことは無いのです。

     ※もちろん番町や麹町のような特別な地域のマンションは
      希少性によってバブル的な取引はありえます。

    (3)京成大和田のマンション価格の内訳
    大和田を含めて、千葉県住宅地は今世紀に入ってもダラダラと値下がりが続き、ここ10年でも坪40万円から坪30万円まで30%程度の値下がりが見られます。低層三階建で敷地を広々とっているので、区分所有権割合も100%程度あります。よって地価下落額がそのままマンション価格の下落になります。
    この辺りのマンション建築費は90万円/坪程度であり、経済的耐用年数は30年程度と査定され、また設備の経済的減価速度は速く10年でゼロになると考えられるため、結果的に建物価格は当初10年で1/3に低下するものと考えられます。

     10年前の新規価格=90万円(建物)+40万円(土地)=130万円/坪
     現在の中古価格=30万円(建物)+30万円(土地)=60万円/坪

    となりますので、大和田地区のマンション価格の下落をこのように説明できるのです。

    (4)東京カンテイの誤謬は何故起きたか
    難しい話ではないです。表参道駅近中古マンションの直近の成約価格を、横軸建築年次で表した図を示します。


    単純に新しいマンションほど価格が高くなっており、近年は新築マンションの価格が上がっているので「10年前の新築価格よりも今の新築価格が高い」というだけのことです。市場平均価格と個別マンションの価格推移とを区別できない、統計上のアヤということに過ぎないのです。
    個別にマンション価格を見れば決して30%も値上がりしているわけではないのです。市場価格が上がっているだけなのです。

    統計を知らない方が不動産を見ると誤ります。
    不動産鑑定士は統計も当然に理解して定量的な判断をするので、こうした誤りはしないのですが、東京カンテイさんは何を初歩的な誤りをしてるんでしょうかね。



    トップ写真はヤンゴンの高級マンションです。

    ミャンマーの首都ヤンゴンでは、2011年の民主化以降、昨年までに凄まじい地価上昇が起きていました。理由は簡単、軍事政権時代に利権を全て握っていた軍事政権関係者(国民の0.1%)が、スーチーさんの復帰による資産没収を怖れ、マネーロンダリングのために投機資金が流れ込んだためです。既にヤンゴン中心部の住宅地は麻布周辺の地価水準まで上昇し、インテリジェントビルのオィフス賃料は六本木ヒルズ並みに上昇しています。


    この高級マンションは販売開始(建築確認時点)から分譲が開始されて即日完売となりましたが、その後がすごい。まだ建物が影も形も無い段階から「転売」が開始されるのです。転売の度に価格は吊り上り、多い部屋では10回も転売されるほどだそうです。

    マンション竣工時に最高値をつけ、その後はみるみる値下がりするという状況だということですが、詳しくはまた追って解説させて頂きます。






  • 「大きくなると安くなる」
    --分かれば簡単、不動産の価格--

    カテゴリー:市場分析 2013年4月14日 記事番号:921

    よく不動産屋さんに「この辺りの相場は幾らくらいですかね」というような質問をする方がいらっしゃいます。確かに取引相場と言うのは土地を買ったり売ったりする人にとって重要な情報ですからね。

     

    聞かれた不動産屋さんは、おそらくこんな風に判断することでしょう。

     

    「この人は20坪位の戸建てを買うつもりだから、20坪くらいの取引事例で中心価格帯となっている相場は幾らぐらいかな」と。

     

    もし聞いたお客様が二世帯住宅を建てたいと考えている比較的裕福な方だとすれば、

     

    「この人は60坪以上の大きめの土地を買うつもりだから、60坪前後の取引事例で中心価格帯となっている相場は幾らくらいかな」と考えるでしょう。

     

    ではお客さんがマンションデベロッパーさんだったらどうでしょう。

    法人で研修施設を建てたいと思っている方ならどうでしょう。

     

    不動産の価格は他の財と同様に「市場の需要と供給の関係」で決まります。

     

    需要市場はお客様により形成されますので、買いたいお客様が「どれほどお金を出せるか」によって市場相場は決まるのです。

     

    しかもその市場は

     「20坪の戸建て用地を求めるお客様」

     「60坪の戸建て用地を求めるお客様」

     「200坪のマンション用地、研修施設用地を求めるお客様」

    各々のお客様で市場を形成する市場参加者が異なるのです。

     

    市場参加者が違えば、中心価格帯が変わります。

     

    おそらく同じ地域の土地でさえも、

    20坪の戸建て用地なら、2,000万円から3,000万円くらいで坪単価100万円くらい

    60坪の戸建て用地なら、4,000万円から5,000万円くらいで坪単価70万円くらい
    200坪のマンション用地なら1億円前後で坪単価50万円くらいになります。

     

    どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。

     

    それは「総額と単価の関係」と言うものがあるからです。

     

    20坪の土地は総額が低いので、「買い易いから単価が高くなる」

    60坪の土地は総額が張るので、「買い難いから単価が下がる」のです。

    200坪の土地はそのままではエンドユーザーに売れないから、戸建分譲するなりマンション建設するなりしないと売れないので、そのための業者の先買いリスク(=利潤)を得られるだけの価格でなければ買わないので「単価が下がる」のです。

     

    実際の実例で説明してみましょう。

     

     

    この図は横浜市の某住宅地域での最近の取引事例を調査したものです。

     

    鑑定評価対象の土地が60坪程度だったので、「60坪の土地の価格」を求めるため多くの事例を収集して整理しました。と言いますのも、この調査を依頼したお客様が不動産屋さんに「20坪の土地の単価」を吹き込まれていたからです。

     

    「どうしてウチの土地は坪50万円(16万円/㎡)なのよ。不動産屋さんは坪70万円(22万円/㎡)て言ってるよ。」と。

     

    だから実際の取引事例でどうなっているのかを示してあげる必要があったのです。

     

    そして理由を説明する必要があったのです。

     

     

    実はこの関係は直線関係ではないのです。

     

    エンジニアにはなじみのある両対数グラフにプロットすると乗るんですよ。

     

    自然界における「大きさと価値」の関係は、

    殆どが両対数グラフで直線になる指数関係なんです。

     




    この傾きは地域によっても用途によっても変わります。

    そのうち経済法則も交えてこの関係を証明したいと考えてます。

     

    人間社会も自然界の中で営まれているので、

     

    自然界の掟のような規模と価値の指数関係の中で定まっているんですね。

     

     

     

     ※写真は札幌の雪印パーラーのメニューの一つ

      「I am a No.1  (4,200円)」です。
      一番上のトッピングのソフトクリームコーンは普通サイズですから、
      大きさが分かって頂けるでしょう。

      一般のパフェの10人前くらいで価格は5倍。

      確かに大きくなると単価?は安くなるようで、、、、

  • 駅から近ければ良いってもんじゃないのでは?
    --- マンション選びの注意点 ---

    カテゴリー:市場分析 2013年3月10日 記事番号:918

    写真はババ・オ・ラム発祥のお店、ストレー(パリ モントルグイユ通り51番地)のババ達です。日本では美食家サバラン氏の名前を冠した「サバラン」という名前の方が有名になっていますが、欧州では"Baba Au Rhum"です。

    これはラムシロップに浸したケーキなので、酒飲みにも受けが良い人気のお菓子。

    でもでも気を付けないと酔っぱらうし、何しろカロリー甚大なので太ります。

     

    知って覚悟して選べばよいのですが、

    見た目や条件だけで選ぶと痛い目に合う、

    「マンション選び」も一緒ですよ。

     

    どの住宅誌、不動産屋さんも口を揃えて言うのが「マンションを選ぶなら駅前物件ですよ。駅から徒歩10分圏内でないとダメですよ」です。

     

    これは基本的には間違いないです。

    特に賃貸マンションでは駅から10分を超えると、途端に人気が落ちます。

     

    では駅から近ければ良いのでしょうか。

    特に収益物件や自己居住物件として「分譲マンションを買おうと思っている方」に注意をして頂いた方が良い点がございます。

     

    (1)日当たりが悪いと途端に居住用マンションは人気が落ちる

     幾ら駅から近いと言っても「日が全然当たらない部屋」というのは嫌ですよね。誰だって嫌なものなのです。そして絶対に気を付けないといけないのは「今は日が当たるけど、将来的にもずっと当たってくれるのか」という点です。

     どうやってそれを判断したらいいのでしょう。

     隣が今は戸建てなんで今は日が当たるけど、数年後に戸建ての土地が売られて高層マンションが建つことだってありますよね。

     どうしたら良いと思いますか?

     

    (2)駅からの距離は実は道路距離ではない。

     不動産屋さんの広告で「駅から8分」とか書いてますよね。それって「距離を分速80mで割った時間」を表示することになってます。では距離は何でしょう。

     

     驚くなかれ、少なくない数の広告に掲載された距離は「直線距離」なんですよ。

     

     普通の人はヘリコプターには乗らないので、道路を歩きます。だから駅からの距離を正確に把握するためには「道路距離」で比較しなければいけません。だって歩くのは家の屋根の上をではなく、道路ですからね。

     どうやってそれを見破ったらいいと思いますか?

     

     

     

    【解答】

    (1)どうやって陽当り良い物件を選んだらよいか。

     まずね、マンション敷地の道路付きを見ましょう。

     マンションの南側に幅員15m以上の道路があるなら、陽当りはずっと良いはずでしょうね。ただし道路挟んだ反対側に巨大な高層マンションが建ってしまったら、低層階では日が当たらなくなる可能性はあります。

     そのような高層マンションが建てられてしまうのが「商業地域」と呼ばれる地域なんです。日本全国どこでも「日照権」なるものが主張できると誤解されている方が居ますが、実は商業地域では日照権など主張できないのです。日影規制(建築基準法第56条の2)は適用除外なのです。だから商業地域では、北側の住人の事なんか一顧だにしなくてよいのです。

     

     普通、駅前の大通り沿いの地域は商業地域指定されてます。だから駅前の便利な場所でマンション買ったら、普通に陽当りは期待できないのです。特に大通りから一本中に入った幅員8m程度の道路沿いで北側道路のマンションは危ないです。例え今は南側が中低層建物が建っていたとしても、いつ何時、南側に高層マンションが建つやも知れません。そうしたら日照は皆無です。

     賃貸ワンルームならそれでも「駅前の便利な部屋が良い」という需要がありますから良いですが、ファミリータイプの部屋で日照ゼロではよほど賃料を下げないと入らないです。どのくらい下がるかと言えば、先に御紹介した川崎の事例では㎡単価で1,000円の差、30㎡の!LDKなら1部屋当たり年間36万円の差が出てしまいます。

     

     商業地以外ならどうかと言えば、たとえば準工業地域や第一種住居地域という比較的容積率の緩和された用途地域があります。大抵が東京では第3種高度地区に指定されていて、北側隣地境界で10m高さ以上の部分には日を当てないといけないというものですが、3階以下の住戸はやはり日が当たりません。

     ですから3階以下の低層階は今は日が当たっていても、将来的に隣地に中高層のマンションが建ったら日が当たらなくなっても文句が言えない、賃料が下がってしまう、ということを十分に理解して購入されることが必要です。

     

     実際、築20年の駅前マンションで、全く日が当たらない低層階の部屋というのを幾つも見てきています。そうしたマンションが建った当時の南側は低層戸建住宅だったんですよ。日が全く当たらない、暗くじめじめして苔むしたベランダは哀しいです。

     

     

    (2)実際の距離はどうやって測るのか。

    先日、「駅から12分」とい広告記載を見て、絶対におかしいと思って調べたら、やはり直線距離でした。道路距離では途中に公団住宅などもあって迂回が必要で、徒歩20分もある場所でした。

    ではどうすれば本当の駅距離を把握すればよいでしょうか。

    それは物件の住所を正確に不動産屋さんから聞き出して、マピオンとかグーグルマップとかで徒歩距離を出せばよいのです。この時、絶対に気を付けないといけないのが、不動産屋さんの「駅からの距離」の駅は「駅の出口」なんです。

    特に地下鉄は注意してくださいね。地下鉄は地表面の出入り口から電車乗るまでに5分以上歩くことって結構ありますでしょう。我々が知りたいのは「ドアtoドア」の距離ですよね。その点も十分に考えて、地図上の駅の位置(たぶん改札口が良いです)を分かったうえで計測してくださいね。

    たぶん不動産屋さんの広告の距離と全然違う結果が出てくると思います。

     

    ちなみに不動産鑑定評価では、現に陽当りの無いマンションは賃料収益が下がっているので、収益価格で評価して減価します。また駅距離は必ずマピオンで自分で測り直して計算します。不動産屋さんの広告距離は全く見ませんよ。

     



     

    (注)

    ストレーのババ達はここに見せているように三種類です。

    真ん中がオーソドックスなババ・オ・ラムで、コルク状のブリオッシュをラムシロップに浸したものです。

    左はそのババ・オ・ラムに切れ目を入れて、生クリームをたっぷりつけて、果物をトッピング。
    右はレーズンをクリームにいれたアリババです。

     

    私がストレーを訪れた日は多くのパティスリーでババが見つかり、一日に5個も食べる羽目になった日でした。

    http://blog.livedoor.jp/kumasanr/archives/3953131.html

     

  • 陽当りと賃料の関係

    カテゴリー:市場分析 2013年2月2日 記事番号:909

    川崎駅から徒歩圏内の地域に、少しまとまった土地をお持ちのお客様から資産活用のご相談を受けた時のお話です。

     

    通常、まとまった土地では以下の二つの方法があります。

     (1)マンション等の共同住宅用の敷地として一体利用する。

     (2)標準的な面積の画地に区画割りして分割分譲する。

     

    このいずれかが適切かは、その土地の用途地域指定や指定容積率や高度地区等の都市計画がどうなっているかを調査し、さらに地域のマンション需要や戸建て需要がどのようなものなのかを把握して判断する必要があります。

     

    調査した結果、この土地には高さ20mまでの中高層共同住宅の建築が可能であり、1LDKや2DK程度の単身又は小家族向けの賃貸マンションの需要が大きいことがわかりました。一方で、15坪前後の狭小地に3階建の戸建住宅の需要も高く、一体利用でも分割利用でもどちらでも需要は望めると判断されました。

     


    一体利用する場合を想定して、概略設計を行った時に気づきました。

    お客様の土地は長方形で南北の二方路地(南側と北側に道路のある土地)です。

    既に北側に賃貸マンションを建築し、南側はご自宅と駐車場として使っておられました。この南側の土地をどうするのが良いのかというご相談でしたので、この南側の土地に中高層のマンションを建てたらどうかという判断となります。

     

    問題は南側に中高層マンションを建ててしまうと、北側の既設マンションの陽当りが落ちてしまうという事にありました。

     

    陽当りの良しあしでどの程度、賃料が変わるでしょう。

     

    そこでこの地域の類似した不動産について賃料(実際に契約となった成約賃料)を調査してみることにしました。その結果を図に示します。
     

     

    既設マンションが昭和60年代の建築だったので、その築年前後の賃貸マンションの賃料に対する陽当りの影響を分析し、併せて新築および築浅マンションに対する陽当りの影響も分析してみました。

     

    まず、驚くべきは新築・築浅マンションにおける陽当りの影響です。

    陽当りの良い物件では4,000円/㎡程度なのに対し、

    日当たりの悪いものは3,000円/㎡以下です。

    およそ35㎡前後の賃貸面積の物件を選択していますので、

    陽当りの良し悪しで、月額家賃に約35,000円(年額42万円)の差が出てしまいます。

    賃料収入で3割もの差が出てしまうほど、陽当りに対する典型的需要者の選好性が強いという事がわかります。ですから、この地域で新築マンションを建てる際には、必ず南側の隣接不動産の状況を的確に判断することが重要だという事がわかります。

    お客様の不動産は南側には低層戸建住居が立ち並んでいる地域ですので、少なくとも新規賃料で低位に位置することはないと判断できます。

    それでは築年が25年以上にもなった賃貸マンションでは影響はどうでしょう。

    陽当りの良い物件が2,700円/㎡程度なのに対し、陽当りの悪い物件は2,200円/㎡と低迷しています。新築ほど賃料差は大きくはありませんが、それでも賃料単価で500円/㎡の差があり、月額17,000円(年額21万円)の差が出ると考えられます。

     

    現状では南側はお客様の二階建住居と駐車場しかなくて、既設マンションは陽当りが良好になっています。しかしこの南側の土地に中高層マンションを建ててしまうと、北側に位置する既設マンションの賃料は下がってしまうことになります。

     

    不動産鑑定士は対象不動産の最有効使用を判断して価格を決めるのが仕事ですが、このようにお客様が複数の不動産を保有され、対象不動産以外の他の不動産に対象不動産の最有効使用の建物が悪影響を及ぼす場合、それも考慮した判断を行うことが不可欠なのです。


     

    居住用不動産の場合には「居住性、快適性、利便性、安心性」等によって効用が異なるため、効用に対して貨幣価値がつく不動産の価格および賃料は、効用の度合いに応じて変わります。
    不動産鑑定士は市場における典型的需要者が、その効用の度合いの強弱に対してどのような行動を取るかを的確に把握して、価格または賃料に適切に反映することが求められています。しかもその「典型的需要者の行動」は地域性があり、都市と地方では異なり、また同一都市内でも細分化された地域間で異なる行動となる場合があります。

    今回は具体的な事例を示して、不動産鑑定士が鑑定評価において検討する範囲や内容を説明しました。このように不動産鑑定士は最有効使用を単純に判定・評価しているわけではないことをご理解頂ければ幸いです。

     

     

     

     

     

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