• HOME
  • 金融・法律・会計事務所向けサービス
  • 不動産取引に関する意思決定支援
  • 賃料改定支援
  • 料金体系
  • お問合せ

ブログ

  • 相続市場の今後の見通しについて

    カテゴリー:相続関連 2025年5月18日 記事番号:964

    1.最近の相続税の状況

    平成27年の相続税基礎控除額の引き下げ以来、相続税の納税者・納税額が増加しているという話を聞いていましたが、実際の所、どれほど増加しているのか調べたことがなかったので、今回、国税庁の公表データを調べてみました。

    まず図1に各財産(土地、建物、現預金、有価証券、その他)の課税標準額と納税額の全国合計額を示します。図1を見てわかる通り、「現預金」の伸びが著しいことが分かります。平成26年以前では3兆円規模だったものが、令和5年には8兆円まで増加しています。土地は高騰が言われているにも拘らず、意外にも5-6兆円レベルから7兆円レベルと、それほど顕著な増加はしていません。

    各財産の増加率を比較するため、図2に「平成24年=100」とした場合の変化率を示します。増加が顕著なのは、やはり現預金で2.7倍まで上昇していますが、それと同等の上昇を示しているのが有価証券でした。また納税額も平成24年の2.4倍水準まで増加しています。そして最も増加率は小さいのが、高騰していると言われている土地の変化率でした。平成24年以降の第二次安倍内閣による金融緩和政策で地価・株価が上昇してきましたが、令和5年で平成24年比は1.3倍程度です。

    1.各相続財産等の課税標準額等の推移


    2.相続財産等の課税標準額等の変化率の推移


    テキスト ボックス: 図3このように相続財産額の内訳が近年変化していることが明らかになりましたので、その状況を分かり易く示すために、各相続財産額の割合の変化として図3に表しました。

    図3.各相続財産額の割合の変化


    3に示すように、平成24年から令和5年までに相続財産の合計額が2倍近くまで増加した間に、土地割合が45%32%に下落し、代わりに現預金が25%から35%に上昇して逆転しました。他は有価証券がやや上昇しただけで家屋などはほとんど変化有りませんでした。


    2.相続税制の改定の影響

    平成26年に税制改定が行われ、同27年に施行されました。バブル崩壊に伴う地価下落による税負担の緩和を是正し、資産再分配機能の回復のための基礎控除の引き下げが主な趣旨で、それまでの「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」から「3,000万円+600万円×法定相続人数」に変更されました。この影響で「相続税の納税義務者」が大幅に拡大しました。図4に相続税申告件数と相続人の人数の推移を示します。

    4.申告件数・相続人数および件数当たりの財産額の推移 


    平成27年以降に申告件数は5万件から10万件超に、相続人数も13万人から25万人水準へと倍増しました。こうした件数・人数の増加は「件数当たりの相続財産総額」および「人数当たり納税額」の下落をもたらしました。図4に併記した通り、財産総額は2.3億円から1.5億円レベルに、納税額も10-12百万円から8-9百万円レベルに各々下落しています。すそ野が広がった分だけ平均が下がったわけです。とはいえ、図1に示した通り、国庫に納められた相続税額は1.5兆円から3兆円レベルに倍増していますので財務省の思惑通りの経過になっています。財務省は後述する世代間金融資産の偏在を踏まえ、的確な施策を講じて徴税を図ったと言えます。

    5.申告件数当たりの各財産額の推移


    相続税申告件数当たりの各相続財産の課税標準額の推移を図5に示します。図1で示したような右肩上がりの増加は件数増で相殺され、ほぼ横ばい水準で推移していることが分かります。このように件数当たりで見ると異なる結果になっており、「相続財産総額や相続税納付額の増大は、専ら相続件数の増大によってもたらされてきている」と推察されます。また相続財産は1/3が土地、1/3が現預金、残りの1/3が有価証券や建物等という構成であり、これが平均像となります。

    相続件数当たりの相続人数は概ね3人で、納税額を3倍にしても2,400-2,700万円水準であり、相続された現預金が5,000万円水準なら、現預金で相続税を納税できることになります。生命保険を使えば相続税のかからない現金最大500万円を相続人に手渡す事ができ、8-9百万円水準の納税額の過半を賄う事が出来るわけです。例えば図4の令和5年の相続額145,000千円に対する相続税額を試算すれば、以下のようになります。

    145,000(30,0006,000×3)97,000千円

    97,000千円×30%7,00022,100千円(≒7,400千円/人)

    このようにマクロ的、平均的には「特段の相続対策」をしなくても、相続財産から納税する事が出来る筈だという状況にあることが分かります。すなわち相続対策が大半の被相続人に対しては不要であるという現状が分かります。

    3.相続対策を必要とする場面はいつまで続くのか

    財務省は図5のようにシミュレーションして、過半の相続で納税が困難な状況にはならないと判断して税制改革を行ったと推察されます。逆に言えば、図5のような財産構成から大きく外れる(一般には倍半分以上の乖離)場合に、納税難易を試算して備えることが大事なのであり、例えば現預金が半分以下とか土地が倍以上もあれば、納税資金が不足する可能性が高まります。また自社株の評価額が異常に高い会社オーナーは、株を他人に売るわけにはいかないので、事業承継税制を利用した自社株譲渡の準備を生前から進めておく必要がある等、我々専門職業家が役立つ場面が多いと考えられます

    問題はいつまでこの相続が続くかと言う点にあります。日本の家計金融資産の6割以上が65歳以上(2019年時点)の高齢者世帯が保有しています。

    6.家計金融資産の世代別保有内訳(2019) 


    この層がこれから一斉に被相続人となり始めるわけであり、概ね2040年まで続くと予想されます(図7)。その後のボリュームゾーンである「団塊ジュニア世代=2019年時点で40台後半」はバブル崩壊後に社会人となった氷河期世代であり、収入・資産が少ない特徴を有しています。団塊世代の相続人として相続財産を受けたとしても相続税として現預金は徴収され、今後の令和バブル崩壊で不動産価格や株価が「調整」されればこの層の相続財産は棄損されることになります。だとすれば相続市場が活況を示す期間は今後10-15年程度ではないかと予測されます

    7.日本の人口ピラミッドの変化

メルマガ登録

セミナー情報

用語集

ブログ

くまさんの食日記

アクセスのご案内

〒210-0014
神奈川県川崎市川崎区貝塚1-4-13
コスモ川崎502号
ITOソリューションズ株式会社